物理ノート

サイエンス社「数理科学」SGCライブラリの読書メモ

カオスと量子物理学

SGCライブラリ - 1

カオスと量子物理学

パラダイムの交差点に挑む

中村勝弘 著

1997年5月25日 初版発行

カオスの出現と断熱不変量の量子化の破綻

 {2} 次元振動子の保存系カオスを考える:

 {\displaystyle H_0 = \sum_{i=1,2}(p_i^2 + \omega_i^2q_i^2)/2}

力学変数を  {\{p_i,q_i\}} から  {\{J_i,\varphi_i\}} へ正準変換:

 {\displaystyle H_0 = \sum_{i=1,2}\omega_iJ_i \equiv H_i(J_1,J_2)}

  • 作用変数: {\displaystyle J_i = (2\pi)^{-1}\oint p_idq_i}
  • 角変数: {\varphi_i = \omega_it}

全ての軌道は、適当な半径  {J_1} {J_2} で特徴づけられたトーラスの表面に巻きついた周期的あるいは準周期的軌道となる。

この系に非可積分摂動を与える:

 {\displaystyle H = H_0(J_1,J_2) + \varepsilon\sum_{m,n}f_{mn}(J_1,J_2)\cos(m\varphi_1 + n\varphi_2)}

  • 摂動が十分小さい場合
    •  {|f_{mn}| \ll |m\omega_1 + m\omega_2|}
    •  {\varepsilon} の項を消去する作用変数・角変数が存在する。
    •  {H = H_0(J_1^{(\infty)},J_2^{(\infty)})}
    • 元のトーラスは変形し、新しいトーラスができる:KAM トーラス
  • 摂動が大きい場合
    •  {|f_{mn}| \gg |m\omega_1 + m\omega_2|}
    •  {\varepsilon} の項を消去する作用変数・角変数が得られない。
    • トーラスは破裂し、軌道は無限個の破片を再帰性なく巡る:カオス

カオスの半古典量子化と永久電流への応用

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