量子論の基礎
SGCライブラリ - 22
量子論の基礎
その本質のやさしい理解のために
清水明 著
2003年3月25日 初版発行
基本的枠組み
古典論の基本的仮定と枠組み
- 全ての物理量は、どの瞬間にも各々ひとつずつ定まった値を持っている。
- 測定とは、その時刻における物理量の値を知ることである。
- ある時刻における物理状態とは、その時刻における全ての物理量の値の一覧表のことである。
- 時間発展とは、物理量の値が時々刻々変化することである。
量子論の基本的仮定と枠組み
- 全ての物理量、即ち可観測量が、各瞬間瞬間に、定まった値を持つことはない。
- 物理量 の測定とは、観測者が測定値をひとつ得る行為である。
- 物理状態とは、各 に対してそれを測定した時の測定値の確率分布 を与えるものであり、物理量とは別のもの で表す。
- 系が時間発展するとは、測定を行った時刻によって異なる が得られるということである。
閉じた有限自由度系の純粋状態の量子論
要請(1)
量子系の純粋状態は、ある複素ヒルベルト空間 の規格化された射線で表される。
- 射線:
- 規格化:
要請(2)
物理量、即ち、可観測量は、 上の自己共役演算子によって表される。
- 自己共役演算子:
- 自己共役演算子の固有値は、全て実数である。
- 自己共役演算子の固有ベクトルの全体は、完全系をなす。
要請(3)ボルンの確率規則
状態 について、物理量 の誤差がない測定を行ったとき、測定値 は の固有値のどれかに限られる。
どの固有値になるかは、一般には測定ごとにランダムにばらつき、 が区間 に入る確率 は以下で与えられる:
- 射影演算子:
- 離散固有値の場合:
- 連続固有値の場合:
要請(4)
閉じた量子系の、時刻 における状態ベクトルを と書くと、その時間発展は次のシュレーディンガー方程式で記述される:
- プランク定数:
- ハミルトニアン:
要請(5)射影仮説
測定直前に なる状態ベクトルを持っていた系に、物理量 の理想測定を行い、測定値が の離散固有値の中のひとつ であったとする。
その場合、測定直後の状態ベクトル は次式で与えられる:
- 時間発展のすべてについて、確率が保存される。
- 理想測定であれば、1回目の測定の直後に行われた2回目の測定の結果は、必ず1回目と一致する。