物理ノート

サイエンス社「数理科学」SGCライブラリの読書メモ

応用のための関数解析

SGCライブラリ - 30

応用のための関数解析

その考え方と技法

吉田善章 著

2004年1月25日 初版発行

空間と位相

線形空間  {X} に内積  {(\cdot,\cdot)} が定義されているとする。

  •  {X} {||x|| = \sqrt{(x,x)}} をノルムとするノルム空間であるとき、 {X} を pre-Hilbert 空間という。
  •  {X} が完備な pre-Hilbert空間であるとき、 {X} を Hilbert 空間という。
  • Hilbert 空間とは、ノルムが内積によって誘導された Banach 空間である。

 {X} は内積  {(\cdot,\cdot)} が定義された pre-Hilbert 空間であるとする。

  •  {X} の2つの元  {x,\,y} は、 {(x,y) = 0} であるとき直交するという: {x \perp y}
  •  {X} の2つの部分集合  {A,\,B} {(x,y) = 0} {\forall x \in A,\,\forall y \in B})であるとき直交するという: {A \perp B}
  •  {X} の部分集合  {A} に対して、 {A} の全ての元と直交する  {x \in X} の全体集合を  {A} の直交補空間という: {A^{\perp} = \{x;\,(x,y) = 0,\,\forall y \in A\}}

射影定理

 {X} を Hilbert 空間、 {A} をその閉部分空間とする。

任意の  {x \in X} は一意的に以下のように分解される:

 {x = x_{\parallel} + x_{\perp}\quad (x_{\parallel} \in A,\,x_{\perp} \in A^{\perp})}

 {x_{\parallel}} {x} {A} への射影という。

Hilbert 空間  {X} の閉部分空間  {A} による直交分解: {X = A \oplus A^{\perp}}

完全正規直交系

Hilbert 空間  {X} の可算部分集合  {\{\varphi_j\}} が正規直交系であるとは、 {(\varphi_j,\varphi_k) = \delta_{j,k}} をみたすことをいう。

正規直交系  {\{\varphi_j\}} によって張られる閉部分空間  {M}

 {\displaystyle M = \overline{\left\{x \in X;\, x = \sum_ja^j\varphi_j,\,a^j \in \mathbb{K}\right\}}}

 {M = X} であるとき、 {\{\varphi_j\}} を完全正規直交系という。

可分な Hilbert 空間  {X} は、たかだか可算個の元からなる完全正規直交系  {\{\varphi_j\}} をもつ:

  •  {\displaystyle x = \sum_j(x,\varphi_j)\varphi_j\quad (\forall x \in X)}
  •  {\displaystyle ||x||^2 = \sum_j|(x,\varphi_j)|^2\quad (\forall x \in X)}
  •  {\displaystyle (x,y) = \sum_j(x,\varphi_j)\overline{(y,\varphi_j)}\quad (\forall x,y \in X)}

作用素

Banach 空間  {X} における線形作用素  {\mathcal{A}} を考える。

作用素  {(\lambda I - \mathcal{A})^{-1}} {\lambda \in \mathbb{C}})を  {\mathcal{A}} に対するレゾルベント作用素と呼ぶ:

  •  {(\lambda I - \mathcal{A})^{-1}} が存在して連続、かつその定義域が稠密となるような複素数  {\lambda} の集合を  {\mathcal{A}} のレゾルベントと呼び、 {\rho(\mathcal{A})} と表す。
  •  {\sigma(\mathcal{A}) = \mathbb{C}\backslash\rho(\mathcal{A})} {\mathcal{A}} のスペクトルと呼ぶ。

固有値問題は作用素  {(\lambda I - \mathcal{A})^{-1}} の特異点を探す問題にほかならない。

スペクトル  {\sigma(\mathcal{A})} は次の  {3} 種に分類される:

  • 点スペクトル  {\sigma_p(\mathcal{A})}
    •  {(\lambda I - \mathcal{A})^{-1}} が存在しないような  {\lambda} の集合
  • 連続スペクトル  {\sigma_c(\mathcal{A})}
    •  {(\lambda I - \mathcal{A})^{-1}} が存在し、その定義域が稠密であるが、不連続となるような  {\lambda} の集合
  • 剰余スペクトル  {\sigma_r(\mathcal{A})}
    •  {(\lambda I - \mathcal{A})^{-1}} が存在するが、その定義域が稠密でないような  {\lambda} の集合

Dunford 積分

 {\mathcal{A}} を Hilbert 空間  {X} における有界線形作用素とする。

 {F(\lambda)} {\sigma(\mathcal{A})} のある近傍  {U} で正則な関数とし、 {\sigma(\mathcal{A}) \subset U_0 \subset U} を満たす  {U_0} に対して Dunford 積分を定義する:

 {\displaystyle F(\mathcal{A}) = \frac{1}{2\pi i}\oint_{\partial U_0}F(\lambda)(\lambda I - \mathcal{A})^{-1}d\lambda}

ただし、 {\partial U_0} は有限個の向きづけられた Jordan 曲線からなるとする。

このとき  {F(\mathcal{A})} {X} 内の有界線形作用素となる。

 {\sigma(\mathcal{A})} の近傍  {U} で正則な関数  {f,\,g} に対して次式が成り立つ:

 {f(\mathcal{A})\cdot g(\mathcal{A}) = (f \cdot g)(\mathcal{A})}

関数空間と微分方程式

ベクトル場の理論

非線形問題