代数幾何入門講義
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代数幾何入門講義
小林正典 著
2008年6月25日 初版発行
ネーター環
環 の部分 加群を のイデアルという。
イデアル が で生成されるとき、 と書く。
真のイデアル で「 ならば または 」が成り立つものを素イデアルという。
包含関係に対して極大な真のイデアルを極大イデアルという。
可換環 の真のイデアル に対し、 を含む極大イデアルが存在する。
次の同値な3条件を満たす環 をネーター環という。
- 昇鎖条件: の任意のイデアルの増加列 に対し、ある自然数 が存在して、 が成り立つ。
- 極大条件: のイデアルを要素とする空でない集合 は、包含関係に関して極大元をもつ。
- 有限条件: の任意のイデアルは有限生成である。
ヒルベルトの基底定理
がネーター環ならば、多項式環 もネーター環である。
環準同型 があるとき、 は 代数と思える。
代数 の元 が 上整であるとは、 が 係数のモニックな(最高次の係数が である)多項式方程式の解となることをいう。
のすべての元が 上整であるとき、 は 上整であるという。
ネーターの正規化定理
を有限生成 代数とすると、 上代数的に独立な元 が存在して、 は 代数として有限(特に整)である。
アフィン代数多様体
ここでは体 を固定し、 変数多項式環 を で表す。
いくつかの多項式 に対し、 内の共通零点集合( の解集合)を(アフィン)代数的集合という。
自身を代数的集合と見たとき( 上の) 次元アフィン空間といい、 あるいは で表す。
の部分集合 に対し、 で に属するすべての多項式の共通零点集合を表す。
を の部分集合とするとき、以下が成り立つ。
- を のすべての元で生成されるイデアルとすると、
代数的集合 に対し、関数 が 上の多項式関数であるとは、ある多項式 が存在して、 上の各点で値が一致する()ことをいう。
上で となる の元全体を と書く。
はイデアルであり、二つの多項式 が 上の多項式関数として同じであるのは、 と同値である。
上の多項式関数の全体 を の(アフィン)座標環という。
は被約( 以外にべき零元をもたない)有限生成 代数である。
代数的集合 から代数的集合 への多項式写像とは、 の多項式関数 を並べてできる写像
のことをいう。
の多項式環を とする。
と に対し、 ならば であるから、引き戻し が定まる。
を多項式写像とする。
- 上の多項式関数 に対し、 は 上の多項式関数であり、引き戻し は 代数準同型である。
- 逆に、 の任意の多項式関数の引き戻しが の多項式関数になる写像 は多項式写像に限る。
から への多項式写像と、 から への 代数準同型は1対1に対応する。
アフィン代数多様体
を空でない位相空間とする。
が可約であるとは、二つの真の閉集合の和集合に表せることをいう。
可約でないとき既約であるという。
代数的集合 に対し、次が成立する。
が既約 が整域
既約な代数的集合 をアフィン代数多様体という。
任意の代数的集合は有限個の既約な代数的集合の和集合で表せる。
アフィンスペクトル
環 に対し、 の素イデアル全体の集合を で表し、 の(アフィン)スペクトルという。
体 上の 変数多項式環 に対し、 を と書き、 上の 次元アフィン空間と呼ぶ。
のイデアル に対し、 と定める。
次が成り立つ。
は のイデアル を閉集合として に位相が定まる。(ザリスキー位相)
と表すと、 はそれ自身開集合であり、 は の開基になる。
と 、完全系列
加群 に対し、 線形写像の全体 は自然に 加群になる。
の上の線形形式の全体、すなわち を と書き、 の双対 加群という。
から への自然な 準同型 ができる。