重点解説 ジョルダン標準形
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重点解説 ジョルダン標準形
行列の標準形と分解をめぐって
西山亨 著
2010年10月25日 初版発行
線型写像と行列
体 上のベクトル空間 からそれ自身への線形写像を線形変換と呼ぶ。
上の線形変換の全体を または単に で表す。
線形変換 をある基底に対して行列表示したものが であるとき、別の基底を取って行列表示すれば、ある正則行列(基底の取替行列) が存在して の形に表される。
逆に、任意の正則行列 に対して の形の行列は のある基底に関する行列表示である。
次の正則行列の全体は一般線形群 をなす。
固有値と対角化
を線形変換 の固有値とする。
固有値 の固有空間:
固有値 の一般固有空間:
線形変換 の相異なる固有値を とし、 で固有値が の一般固有空間を表すとする。
このとき は直和分解を与える。
行列の対角化
次正方行列 に対して、ある正則行列 が存在して
の形にできるとき、 は対角化可能であるという。
次正方行列 に対して、次の条件はすべて同値である。
- は対角化可能である。
- の固有ベクトルからなる の基底が存在する。
- を の相異なる固有値とするとき、 が成り立つ。
- の任意の固有値 に対して が成り立つ。
を 次正方行列で、すべて対角化可能であるとする。
もし が互いに可換であれば、ある正則行列 が存在して、 ()がすべて対角行列であるようにできる。
このようなとき、 は同時対角化可能であるという。
逆に が同時対角化可能であれば、それらは可換である。
行列の標準形
線形変換 が冪零変換であるとは、ある十分大きな整数 に対して となることである。
線形変換 が主冪零変換であるとは、 の基底 であって、 ()かつ となるようなものが存在するときに言う。
正方行列 が主冪零行列であるとは、線形変換 が主冪零変換のときに言う。
主冪零行列を逆順に並べた基底 に関して を行列表示:
$$ X \quad\leftrightarrow\quad \begin{pmatrix} 0 & 1 & & & \\ & 0 & 1 & & \\ & & \ddots & \ddots & \\ & & & 0 & 1 \\ & & & & 0 \end{pmatrix} = \sum_{i=1}^{n-1}E_{i,i+1} \equiv J_n(0) $$
は第 成分が で、その他は であるような 次正方行列を表す。
を冪零行列とすると、ある正則行列 が存在して
$$P^{-1}XP = \begin{pmatrix}J_{m_1}(0) & & \\ & \ddots & \\ & & J_{m_k}(0)\end{pmatrix} = J_{m_1}(0) \oplus \cdots \oplus J_{m_k}(0)$$
と表すことができる。
主冪零行列のサイズ は順序を除いて一意的である。
ジョルダン標準形
線形変換 を考え、その相異なる固有値を とする。
の一般固有空間分解
線形変換 を考えると、 を に制限したものは冪零変換である。
の都合のよい基底を選べば、 は主冪零変換の直和に分解できる:
と書けば、この基底に関して を表現する行列は次のように書ける。