演習形式で学ぶリー群・リー環
SGCライブラリ - 88
演習形式で学ぶリー群・リー環
示野信一 著
2012年3月25日 初版発行
回転群とその一般化
集合 が群であるとは、 の任意の に対してその積 が定まっていて、次の3条件が成り立つことをいう:
- 任意の に対して
- が存在して、すべての に対して が成り立つ。
- 任意の に対して、 を満たす が存在する。
直交群
上の内積 を保つ線形変換を直交変換と呼ぶ。
- 実数を成分とする 行列
- ( 次直交群)
- ( 次特殊直交群)
ユニタリ群
上のエルミート内積 を保つ線形変換をユニタリ変換と呼ぶ。
- 複素数を成分とする 行列
- ( 次ユニタリ群)
- ( 次特殊ユニタリ群)
シンプレクティック群
上のシンプレクティック形式
$$ J_n = \begin{pmatrix} 0 & \mathbf{1}_n \\ -\mathbf{1}_n & 0 \end{pmatrix} $$
を保つ のユニタリ変換全体の集合を とおく。
- ( 次シンプレクティック群)
一般線形群
または とする。
- (一般線形群)
- (特殊線形群)
が閉線形群であるとは、ある に対して が の部分群であり、 の閉部分集合であることをいう。
閉線形群は線形リー群または行列群と呼ばれることもある。
行列の指数関数
写像 を行列の指数関数または指数写像と呼ぶ。
が連続な準同型写像ならば、 となる が一意的に存在する。
閉線形群のリー環
の近傍で定義され を満たす 内の滑らかな曲線 に対して
を の における接ベクトルと呼ぶ。
を満たす 内の滑らかな曲線 すべてに対する における接ベクトル全体の集合を の における接空間と呼び、 と書く。
を閉線形群とするとき
の部分空間
標数ゼロの可換な体 上の線形空間 と、 から への写像 が次の3条件を満たすとき、 は 上のリー環またはリー代数であるという。
- 任意の に対して は の線形変換である。
- 任意の に対して
- ヤコビ恒等式:
2つのリー環 の間の線形写像 が任意の に対して を満たすとき、 は準同型写像であるという。
2つのリー環 が同型であるとは、準同型写像 であって全単射であるものが存在することをいう。(同型写像)
ライプニッツの規則
を満たす の線形変換を の微分と呼び、 の微分全体の集合を と書く。
の随伴表現 を以下により定義する。
- に対して
リー環 の線形部分空間 がイデアルであるとは、以下を満たすことをいう。
リー環 が と 以外のイデアルを持たず、さらに可換でないとき、 は単純であるという。
古典型単純リー環
3次元空間の回転
3次回転群 のリー環 は3次実交代行列全体の集合
$$ J_x = \begin{pmatrix} 0 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & -1 \\ 0 & 1 & 0 \end{pmatrix} ,\quad J_y = \begin{pmatrix} 0 & 0 & 1 \\ 0 & 0 & 0 \\ -1 & 0 & 0 \end{pmatrix} ,\quad J_z = \begin{pmatrix} 0 & -1 & 0 \\ 1 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 0 \end{pmatrix} $$