CP 対称性の破れ
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CP対称性の破れ
小林・益川模型から深める素粒子物理
林青司 著
2012年6月25日 初版発行
対称性と物理学
物理学における対称性:物理法則がある変換の下で不変か?
物理法則の不変性は作用積分の不変性と同等。
素粒子の弱い相互作用における離散的対称性の破れ
混合
CP 対称性が破れていない場合、 中間子の質量固有状態は
現実の CP 対称性が破れた世界では、質量の確定した状態は と呼ばれる状態になる。
の寿命はそれぞれ 。
と の質量差:
ではストレンジネスが2変化する:FCNC (flavor changing neutral current) 過程
CP の破れがない場合、 となる。
CP 対称性がある限り、 は2個のパイ中間子に崩壊できるが、 は2個のパイ中間子には崩壊できず、3個のパイ中間子にのみ崩壊可能となる。
1964 年にクローニン・フィッチらは が起きていること、すなわち CP 対称性が破れていることを発見した。
の崩壊確率は に比べて 程度で非常に小さい。
場の理論における離散的対称性
弱い相互作用の典型例:中性子のベータ崩壊
接触相互作用(contact interaction)
- はフレーバー混合のために クォークに クォークも混ざった 状態
- フェルミ結合定数:
この相互作用ラグランジアンは CP 変換の下で不変だが、仮にフェルミ結合定数 が複素数だとすると、変換の下で不変ではなくなる。
CP 対称性を破るためには一般に複素数の、すなわち位相を持った結合定数が必要となる。
ヤン・ミルズ理論
の基本表現に属する 個のディラック・スピノールを導入する。
$$ \Psi = \begin{pmatrix}\psi_1 \\ \psi_2 \\ \vdots \\ \psi_n \end{pmatrix} $$
の ゲージ変換:
- の微小変換の生成子
共変微分
場の強さテンソル ()
ゲージ不変なゲージ場の運動項
素粒子の標準模型
標準模型では、 ゲージ対称性がヒッグス場の真空期待値によって破られる。
ヒッグス場の真空期待値:
ヒッグス場の運動項
ゲージ場の質量2乗項