物理ノート

サイエンス社「数理科学」SGCライブラリの読書メモ

現代宇宙論講義

SGCライブラリ - 99

現代宇宙論講義

基礎からの系統的な理解を目指して

辻川信二 著

2013年7月25日 初版発行

宇宙進化の歴史

ハッブル・ルメートルの法則

  • ある天体から出る絶対静止系での光の波長  {\lambda}
  • 地球上の観測者が受ける同じ光の波長  {\lambda_0}
  • 宇宙時間  {t} に依存して変化するスケール因子  {a}
  • 天体の赤方偏移  {z}
  • 現在( {z = 0})での  {a} の値  {a_0}

 {z \equiv \lambda_0/\lambda - 1 = a_0/a - 1}

 {z} は現在を基準とした宇宙の過去を表す指標として用いられる。

  • 観測者から天体までの物理的距離  {\mathbf{r}}
  • 共動距離(宇宙膨張でその座標値が変化しない距離) {\mathbf{x}}
  •  {\mathbf{r} = a\mathbf{x}}
  •  {\dot{\mathbf{r}} = H\mathbf{r} +a\dot{\mathbf{x}}}
  • ハッブルパラメータ  {H \equiv \dot{a}/a}
  • 観測者から天体を見た視線方向の天体の速度成分  {v = \dot{\mathbf{r}}\cdot\mathbf{r}/r}
  •  {r = |\mathbf{r}|}

 {v = Hr + a\dot{\mathbf{x}}\cdot\mathbf{r}/r}

セファイド型変光星の後退速度  {v} は、そこから出る光の波長の赤方偏移によって分かる。

 {v \simeq cz = c(\lambda_0/\lambda - 1)}

変光星の固有速度による項を  {Hr} に比べ無視し、 {z \ll 1} {H} は現在の宇宙の膨張率  {H_0} で近似できることを用いると、

 {v \simeq H_0r}

宇宙背景輻射

温度  {T} の熱平衡状態で、振動数  {\nu} {\nu + d\nu} の間にある光の数密度は、黒体輻射に相当する分布関数で与えられる:

 {\displaystyle n(\nu,T)d\nu = \frac{8\pi}{c^3}\frac{\nu^2}{\exp[h\nu/(k_BT)] - 1}d\nu}

  •  {h}:プランク定数
  •  {k_B}:ボルツマン定数

温度  {T} の黒体から放射される、振動数  {\nu} {\nu + d\nu} の間にある光のエネルギー密度  {\varepsilon} はプランク分布に従う:

 {\displaystyle \varepsilon(\nu,T)d\nu = h\nu\,n(\nu,T)d\nu = \frac{8\pi h}{c^3}\frac{\nu^3}{\exp[h\nu/(k_BT)] - 1}d\nu}

温度  {T} の黒体輻射の全エネルギー密度  {\varepsilon_{\gamma}}

 {\displaystyle \varepsilon_{\gamma} = \int_0^{\infty}\varepsilon(\nu,T)d\nu = \frac{(k_BT)^4}{\pi^2(\hbar c)^3}\int_0^{\infty}\frac{x^3}{e^x - 1}dx = \frac{\pi^2}{15}\frac{k_B^4}{(\hbar c)^3}T^4}

一様等方宇宙

フリードマン・ルメートル・ロバートソン・ウォーカー(FLRW)計量

 {ds^2 = -c^2dt^2 + a^2(t)d\sigma^2}

  • 一様等方時空で、宇宙時間  {t} とともに変化するスケール因子  {a(t)}
  • 時間依存性のない、曲率項  {K} をもつ3次元空間の線素  {d\sigma^2}

 {\displaystyle d\sigma^2 = \gamma_{ij}dx^idx^j = \frac{dr^2}{1 - Kr^2} + r^2(d\theta^2 + \sin^2\theta\,d\phi^2)}

  •  {K = 0}:平坦な宇宙
  •  {K \gt 0}:閉じた宇宙
  •  {K \lt 0}:開いた宇宙

アインシュタインテンソル:

 {\displaystyle G_{\mu\nu} \equiv R_{\mu\nu} - \frac{1}{2}g_{\mu\nu}R}

  • 計量テンソル  {g_{\mu\nu}}
  • リーマンテンソル  {R^{\lambda}{}_{\mu\rho\nu}}
  • リッチテンソル  {R_{\mu\nu} \equiv R^{\lambda}_{\mu\lambda\nu}}
  • スカラー曲率  {R \equiv g^{\mu\nu}R_{\mu\nu}}

一様等方宇宙のアインシュタイン方程式:

 {\displaystyle G^{\mu}{}_{\nu} = \frac{8\pi G}{c^4}T^{\mu}{}_{\nu}}

  • エネルギー運動量テンソル  {T^{\mu}{}_{\nu} = \mathrm{diag}\,(-\rho c^2,P,P,P)}
  • 流体が静止している系での密度  {\rho}、圧力  {P}

FLRW 計量におけるアインシュタインテンソル:

  •  {\displaystyle G^0_0 = -\frac{3}{c^2}\left(H^2 + \frac{Kc^2}{a^2}\right)}
  •  {\displaystyle G^i{}_j = -\frac{1}{c^2}\left(3H^2 + 2\dot{H} + \frac{Kc^2}{a^2}\right)\delta^i_j}

フリードマン方程式:

  •  {\displaystyle H^2 = \frac{8\pi G}{3}\rho - \frac{Kc^2}{a^2}}
  •  {\displaystyle 3H^2 + 2\dot{H} = -8\pi G\frac{P}{c^2} - \frac{Kc^2}{a^2}}

両式から  {Kc^2/a^2} を消去することにより以下を得る。

 {\displaystyle \frac{\ddot{a}}{a} = -\frac{4\pi G}{3}\left(\rho + \frac{3P}{c^2}\right)}

  • 物質の状態方程式: {w = P/(\rho c^2)}

 {\rho \gt 0} の場合、 {w \gt -1/3} で宇宙は減速膨張( {\ddot{a} \lt 0})、 {w \lt -1/3} で宇宙は加速膨張( {\ddot{a} \gt 0})する。

フリードマン方程式から  {H^2} を消去すると以下を得る。

 {\displaystyle \dot{H} = -4\pi G(1 + w)\rho + \frac{Kc^2}{a^2}}

平坦な宇宙( {K = 0})で  {\rho \gt 0} のとき、 {w \gt -1} ならば  {H} は減少し、 {w = -1} ならば  {H} は一定である。

観測的に現在の宇宙は平坦に近く、曲率  {K} {0} のときの、現在の宇宙の密度  {\rho_0} を臨界密度という:

 {\displaystyle \rho_0 = \frac{3H_0^2}{8\pi G}}

現在の宇宙に存在するそれぞれの物質(密度  {\rho_j^{(0)}}、エネルギー密度  {\varepsilon_j^{(0)}}) に対して、密度パラメータを以下で定義する。

 {\displaystyle \Omega_j^{(0)} \equiv \frac{8\pi G\rho_j^{(0)}}{3H_0^2} = \frac{\rho_j^{(0)}}{\rho_0} = \frac{\varepsilon_j^{(0)}}{\varepsilon_0}}

宇宙に存在する物質:

  • 相対論的物質
    • 光子
    • ニュートリノ
  • 非相対論的物質
    • バリオン
    • 暗黒物質
  • 暗黒エネルギー

状態方程式  {w = P/(\rho c^2)} が一定のとき、 {\rho \propto a^{-3(1 + w)}} であり、平坦な宇宙( {3H^2 = 8\pi G\rho})では、 {w \gt -1} のとき、宇宙が膨張する解として  {a \propto t^{2/[3(1 + w)])}} を得る。

  • 輻射優勢期( {w \simeq 1 / 3})では、 {a \propto t^{1 / 2}} と変化する。
  • 物質優勢期( {w \simeq 0})では、 {a \propto t^{2 / 3}} と変化する。
  • 宇宙項( {w = -1})では、 {a \propto e^{Ht}} と指数関数的に膨張する。

宇宙論的摂動論

一様等方計量  {{}^{(b)}g_{\mu\nu}} を背景に持つ宇宙で、計量の摂動  {\delta g_{\mu\nu}} を考える。

  •  {g_{\mu\nu} = {}^{(b)}g_{\mu\nu} + \delta g_{\mu\nu}}
  • $${}^{(b)}g_{\mu\nu} = a^2(\eta)\begin{pmatrix}-1 & 0 \\ 0 & \gamma_{ii}\end{pmatrix}$$
  • 共形時間  {\displaystyle \eta \equiv \int a^{-1}dt}

背景時空の線素は、 {{}^{(b)}ds^2 = a^2(\eta)(-d\eta^2 + \gamma_{ij}dx^idx^j)} と書ける。

インフレーション理論

ビッグバン元素合成、バリオン数生成

宇宙背景輻射

宇宙の大規模構造

暗黒エネルギー

一般相対論を超える理論