物理ノート

サイエンス社「数理科学」SGCライブラリの読書メモ

数理物理学としての微分方程式序論

SGCライブラリ - 129

数理物理学としての微分方程式序論

小澤徹 著

2016年11月25日 初版発行

序論 微分方程式の記述する現象とは何か

物理学に現れる微分方程式

  • ニュートンの運動方程式
    •  {x^{\prime\prime}(t) = F(t,x(t),x^{\prime}(t))}
    •  {x: I \ni t \mapsto x(t) \in \mathbb{R}^3}
    •  {F: I \times \mathbb{R}^3 \times \mathbb{R}^3 \ni (t,x,v) \mapsto F(t,x,v) \in \mathbb{R}^3}
  • ナビエ・ストークス方程式
    •  {\partial_tu + u\cdot\nabla u = \Delta u - \nabla p}
    •  {\mathrm{div}\,u = 0}
    •  {u: I \times \mathbb{R}^3 \ni (t,x) \mapsto u(t,x) \in \mathbb{R}^3}
    •  {p: I \times \mathbb{R}^3 \in (t,x) \mapsto p(t,x) \in \mathbb{R}}
  • ボルツマン方程式
    •  {\partial_t f + v\cdot\nabla f = Q(f,f)}
    •  {f: I \times \mathbb{R}^3 \times \mathbb{R}^3 \ni (t,x,v) \mapsto f(t,x,v) \in \mathbb{R}}
    •  {(Q(f,g))(v) = \int_{\mathbb{R}^3}\int_{S^3}B(v - v^{\prime},\omega)(f(v_-)g(v_+) - f(v^{\prime})g(v))d\omega dv^{\prime}}
    •  {v_{\pm} = (v + v^{\prime})/2 \pm |v - v^{\prime}|\omega/2}
    •  {S^2 = \{x \in \mathbb{R}^3; x_1^2 + x_2^2 + x_3^2 = 1\}}
    •  {B: \mathbb{R}^3 \times S^2 \ni (v,w) \mapsto B(v,w) \in \mathbb{R}}
  • マクスウェルの方程式
    •  {\partial_tB = -\mathrm{curl}\,E}
    •  {\mathrm{div}\,B = 0}
    •  {\partial_tE = \mathrm{curl}\,B - j}
    •  {\mathrm{div}\,E = \rho}
    •  {B,E,j: I \times \mathbb{R}^3 \to \mathbb{R}^3}
    •  {\rho: I \times \mathbb{R}^3 \to \mathbb{R}}
  • シュレーディンガー方程式
    •  {i\partial_tu = -\frac{1}{2}\Delta u + Vu}
    •  {u: I \times \mathbb{R}^3 \ni (t,x) \mapsto u(t,x) \in \mathbb{C}}
    •  {V: \mathbb{R}^3 \ni x \mapsto V(x) \in \mathbb{R}}
  • ディラック方程式
    •  {i\partial_tu = -i\sum_{j=1}^3\alpha_j\partial_ju + m\beta u + Vu}
    •  {u: I \times \mathbb{R}^3 \ni (t,x) \mapsto u(t,x) \in \mathbb{C}^4}
    •  {\alpha_j\alpha_k + \alpha_k\alpha_j = 2\delta_{jk}I}
    •  {\beta^2 = I}
    •  {\alpha_j\beta + \beta\alpha_j = 0}
    •  {m \ge 0}
    •  {V: \mathbb{R}^3 \to \mathbb{R}}

力とベクトル場

アフィン空間

空でない集合  {X}、係数体  {\mathbb{K}} 上のベクトル空間  {V} に対し、次の2つの条件を満たす  {X} から  {X} への写像の族  {\{\tau_v; v \in V\}} が与えられているとき  {X} {V} を基準ベクトル空間とするアフィン空間という。

  • 並進群の表現:任意の  {u,v \in V} に対して  {\tau_u \circ \tau_v = \tau_{u + v}}
  • 平行移動を実現するベクトルの存在:任意の  {p,q \in X} に対して唯一つの  {v \in V} が存在して  {\tau_v(p) = q}

一点  {p \in X} に対し、基準ベクトル空間  {V} の元  {v} との組  {(p,v)} からなる集合を  {V_p} とする。

ベクトル空間  {V_p} の元  {(p,v) = (p, q - p)} を点  {p} に関する点  {q = p + v} の位置ベクトルという。

ベクトル場

ニュートン力学における配位空間  {X} とは実ベクトル空間を基準とするアフィン空間であると定義する。

各点  {p \in X} に対し、位置ベクトルのなす空間  {V_p} を接空間といい  {T_pX} と表す。

写像  {F: X \to TX \equiv \bigcup_{p \in X}T_pX} {\mathrm{Proj}_1 \circ F = \mathrm{id}} を満たすものをベクトル場という。( {\mathrm{Proj}_1: TX \ni (p,v) \mapsto p \in X} は第一成分への自然な射影)

ニュートン力学の基礎的枠組み

ガリレイ時空

実ベクトル空間  {W} を基準ベクトルとするアフィン空間  {Y} がガリレイ時空であるとは、零でない線形形式  {T: W \to \mathbb{R}} が存在し、 {W} の部分空間  {\mathrm{Ker}\,T} 自身が  {\{0\}} でないノルム空間であることと定義する。

  •  {Y} の点を事象という。
  •  {T} を時間間隔という。
  • 事象  {p} {q} が同時であるとは、 {q - p \in \mathrm{Ker}\,T} であることと定義する。
  • 事象  {p \in Y} に対し同時事象の全体を  {Y_p} と表す。
  •  {d_p(q, r) = ||q - r||,\quad q,r \in Y_p}

ガリレイ時空  {Y} 内の写像  {g: Y \to Y} は次の3つの条件を満たすときガリレイ変換であるという。

  • アフィン同型: {A_g \in GL(W)} が存在し任意の  {p,q \in Y} に対し  {g(p) - g(q) = A_g(p - q)}
  • 時間間隔の保存:任意の  {p,q \in Y} に対し  {T(g(p) - g(q)) = T(p - q)}
  • 同時事象間の距離の保存:任意の  {p \in Y} に対し  {g(Y_p) \subset Y_{g(p)}} かつ  {d_{g(p)} \circ (g \times g) = d_p}

相空間

ニュートン力学

  • 質点の運動: {x: I \ni t \mapsto x(t) \in X}
  • 質点の速度: {v: I \ni t \mapsto x^{\prime}(t) \in V}
  • 質点の状態: {I \ni t \mapsto (x(t),x^{\prime}(t)) \in TX}
  • 力の場:相空間  {TX} 上の二階のベクトル場  {f: TX \to TTX}

ニュートンの運動方程式

 {mx^{\prime\prime}(t) = F(x(t),x^{\prime}(t))}

 {F = p_2 \circ f}

常微分方程式の初期値問題の局所解

バナッハの不動点定理

リプシッツ条件

カントールの対角線論法

アスコリ・アルツェラの定理

常微分方程式の初期値問題の大域解

ニュートンの運動方程式の初期値問題の大域解

摩擦力と解の絶滅現象

調和写像としてのニュートンの運動方程式

指数法則と指数写像

摂動論的方法による半線形発展方程式の解法

摂動論的方法による半線形発展方程式の解法の具体例

非摂動論的方法による非線形発展方程式の解法

ミンコフスキ時空とローレンツ変換

対称性と微分作用素

共形変換

場の古典論を担う非線形偏微分方程式