量子情報と時空の物理[第2版]
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量子情報と時空の物理[第2版]
量子情報物理学入門
堀田昌寛 著
2019年5月25日 第2版発行
量子情報と量子状態
密度演算子
- はエルミート演算子:
- エルミート演算子 の固有値は非負:
- は確率の規格化条件を満たす:
現代的コペンハーゲン解釈の立場:
- 量子状態は様々な物理量がとる確率分布の集合と等価。
物理量の測定値の確率分布から量子状態 を再構築することは量子トモグラフィーと呼ばれる。
量子測定
- 注目系
- 測定器系
- 測定される の未知の状態
- の始状態
- 時刻 から までの間だけ と は相互作用する。
- 合成系の時間発展はユニタリー演算子 で与えられる。
この状態で の物理量 の理想測定を行う。
- の固有値
- 固有値 に対応する固有状態
- 固有値 には縮退がないことを仮定する。
測定機 が を出力する確率:
測定結果を得た後の合成系の量子状態:
- 測定演算子:
の値が出力された後の の状態:
正演算子値測度(POVM: positive operator valued measure) :
量子操作
ヒルベルト空間の次元が である量子系 の状態 から、ヒルベルト空間の次元が である量子系 の状態 が何らかの物理的過程によって生成されるとする。
に課される条件:
- 線型性:
- トレース保存性:
- 完全正値性:
は TPCP 写像(trace preserving completely-positive map)と呼ばれる。
TPCP 写像のクラウス表現:
- クラウス演算子
任意の物理的操作は TPCP 写像 と等価であり、それはクラウス表現をすることができる。
LOCC
量子情報理論における理想化された設定を考える。
- 局所的操作(local operation)
- 量子系に対して使用できる操作は空間の小さな体積領域内での局所的操作だけと限定する。
- 古典通信(classical communication)
- 空間的に離れた2地点間では古典的ビット列に還元できる情報のやり取りだけを行う。
LOCC の例:
- 量子状態 にある と の合成系 を考える。
- アリスが を所有し、離れたところにいるボブが を所有する。
- アリスが測定演算子 で与えられる局所的測定を に施して測定結果 を得る。
- 古典通信により をボブに伝え、ボブは に依存した局所的ユニタリー演算子 を に作用させる。
一連の操作で構成される LOCC での状態変化:
と の局所性は という形で表現される。
量子エンタングルメント
直積状態に対する LOCC だけでは生成できない量子相関を一般に量子縺れと呼ぶ。
- 分離可能な純粋状態は という純粋状態の直積状態しか存在しない。
- 量子的に縺れた純粋状態は の形に書けない純粋状態を指す。
個の量子系 の合成系の状態がある古典的確率分布 に対して以下の形に書ける時、分離可能状態と呼ぶ。
どのようにしてもこの形に書けない状態が 体系での量子縺れ状態である。
エンタングルメントエントロピー
と の合成系 の純粋状態 を考える。
量子縺れエントロピー:
フォンノイマンエントロピーによる書き換え:
シャノンエントロピーによる書き換え: