物理ノート

サイエンス社「数理科学」SGCライブラリの読書メモ

幾何学から物理学へ

SGCライブラリ - 150

幾何学から物理学へ

物理を圏論・微分幾何の言葉で語ろう

谷村省吾 著

2019年6月25日 初版発行

集合と写像

数学的に考えることのできるものの集まりを集合という。

ラッセルのパラドクス

  • 集合  {X} について  {X \in X} が成り立つならば、 {X} は第 1 種の集合だという。
  • 集合  {Y} について  {Y \notin Y} が成り立つならば、 {Y} は第 2 種の集合だという。

どんな集合も第 1 種か第 2 種かのどちらかである。

 {R :=} 第 2 種の集合全体の集合」と定める。

  •  {R := \{Y\,|\,Y \notin Y\}}
  •  {Y \in R \,\Leftrightarrow\, Y \notin Y}

このとき  {R \in R \,\Leftrightarrow\, R \notin R} となり矛盾する。

パラドクスを避けるために、集合の全体を集合とは認めないことにする。

ベクトル空間と双対空間

ベクトル空間の枠と変換則

抽象ベクトル空間と数ベクトル空間とを関係づける方法を考える。

一般に  {n} 個のベクトルの組  {E = (\mathbf{e}_1,\dots,\mathbf{e}_n)} は線形写像  {E: \mathbb{R}^n \to V} を定める。

写像  {E} が線形同型写像になっていれば、 {E} をベクトル空間  {V} の枠という。

作用素の行列表示

  •  {n} 次元ベクトル空間  {V} の枠  {E_V: \mathbb{R}^n \to V}
  •  {m} 次元ベクトル空間  {W} の枠  {E_W: \mathbb{R}^m \to W}
  •  {E_V} の逆写像  {\Theta_V: V \to \mathbb{R}^n}
  •  {E_W} の逆写像  {\Theta_W: W \to \mathbb{R}^m}

任意の線型作用素  {A: V \to W} に対して線形写像

 {\Theta(A) := \Theta_W \circ A \circ \Theta_V^{-1}: \mathbb{R}^n \to V \to W \to \mathbb{R}^m}

が一意的に存在する。

枠の変換

ベクトル空間  {V} の 2 つの枠  {E_V = (\mathbf{e}_1,\dots,\mathbf{e}_n)} {\tilde{E}_V = (\tilde{\mathbf{e}}_1,\dots,\tilde{\mathbf{e}}_n)} があれば、任意のベクトル  {\mathbf{v} \in V} を 2 通りのやり方で展開できる。

 {\mathbf{v} = v^1\mathbf{e}_1 + \cdots v^n\mathbf{e}_n = \tilde{v}^1\tilde{\mathbf{e}}_1 + \cdots + \tilde{v}^n\tilde{\mathbf{e}}_n}

  •  {E_V} に伴う線形同型写像  {\Theta_V: V \to \mathbb{R}^n}
  •  {\tilde{E}_V} に伴う線形同型写像  {\tilde{\Theta}_V: V \to \mathbb{R}^n}

以下の線型写像は枠  {E_V} での成分表示を枠  {\tilde{E}_V} での成分表示に変換する。

 {T_V^{\tilde{\Theta}\Theta} := \tilde{\Theta}_V \circ \Theta_V^{-1} = \tilde{\Theta}_V \circ E_V: \mathbb{R}^n \to \mathbb{R}^n}

枠・枠変換と関手・自然変換

ベクトル空間の枠と枠変換は、ベクトル空間の圏における共変関手と自然変換になっている。

  • ベクトル空間の圏  {\mathbf{Vct}} の対象は有限次元ベクトル空間である。
  • 枠は各ベクトル空間  {V} に表示空間  {\Theta(V) = \mathbb{R}^n} を与える。
  • 枠は  {\mathbf{Vct}} の射である作用素  {V \xrightarrow{A} W} に表示行列  {\mathbb{R}^n \xrightarrow{\Theta(A)} \mathbb{R}^m} を与える。

枠写像  {\Theta: \mathbf{Vct} \leadsto \mathbf{Vct}} は共変関手の条件を満たす:

  •  {\Theta(A \circ B) = \Theta(A) \circ \Theta(B)}
  • 恒等作用素  {1_V} の表現行列  {\Theta(1_V)} {\mathbb{R}^n} の恒等作用素になる。

枠変換  {T^{\tilde{\Theta}\Theta}: \Theta \xrightarrow{.} \tilde{\Theta}} は自然変換の条件を満たす:

  •  {T_W^{\tilde{\Theta}\Theta} \circ \Theta(A) = \tilde{\Theta}(A) \circ T_V^{\tilde{\Theta}\Theta}}

テンソル積の普遍性

テンソル代数と物理量

外積代数

向き付けと捩テンソル

スハウテン表示と鎖体・境界

体積形式と内積とホッジ変換

ミンコフスキー計量とシンプレクティック形式

多様体

多様体上の微積分

ホモロジーとコホモロジー

幾何学的な電磁気学

カレントで表される電磁気量

物質中の電磁場

幾何学的なハミルトン力学

リー群・リー代数と力学系の対称性

力学系の簡約とゲージ対称性