ガロア理論
SGCライブラリ - 27
ガロア理論
その標準的な入門
中野伸 著
2003年9月25日 初版発行
可換環
可換環
空でない集合 の任意の 2 元 に対して、和 および積 が の元として定まっていて以下の性質をみたすとき、 を可換環という。
- 任意の に対して、以下の等式が成り立つ。
- 次をみたす の特別な元 0 が存在する。
- 任意の に対して が成り立つ。
- 任意の に対して なる が存在する。
- 次をみたす の特別な元 1 が存在する。
- 任意の に対して が成り立つ。
可換環 の元 に対して、 なる が存在するとき、 は の倍数、または は の約数であるという。
の約数を単数という。
可換環 の単数全体の集合は乗法について群をなす。( の単数群 )
0 でない元を掛けて 0 となってしまう元を零因子という。
0 以外に零因子をもたない零環でない可換環を整域という。
イデアル
可換環 の空でない部分集合 は、以下をみたすとき のイデアルという:
- 任意の に対して
- 任意の および に対して
イデアルの例: の一つの元 の倍数全体の集合
準同型写像 の核 は のイデアルとなる。
準同型定理
を可換環、 を準同型写像とすると、 と は同型となる:
可換環 の空でない部分集合 が与えられると、 を含む のイデアルのうち最小のものは なる形の有限和全体の集合として与えられる。
これを によって生成される のイデアルという。
- で生成されるイデアル:
- 単項イデアル:
多項式環
可換環 の元と記号 のべきとの形式的な積 を 上の単項式といい、単項式の形式的な有限和を 上の多項式という。
上の多項式全体の集合を で表す。
の元 は の元 を用いて次の形に一意的に表される。
について、係数が 0 でない項の最大の次数を の次数といい で表す。
標数
整域 に対して、写像 を以下で定める:
()なる を整域 の標数といい で表す。
代数拡大
が体で なるとき、 は の拡大体であるといい拡大 と書く。
拡大 に対して、 上のベクトル空間としての の次元を の次数といい で表す。
代数的元
を体とし、 を のある拡大体 の元とする。
可換環の準同型写像 を考える。
であるから準同型定理より、同型 が引き起こされる。
以下では核 を と書く。
- が成り立つとき、 は 上代数的であるという。
- が成り立つとき、 は 上超越的であるという。
が 上代数的であるとき、多項式 に対して次は同値である。
- は 上既約である。
- が成り立つ。
- の次数は最小である。すなわち、 ならば となる。
- 。すなわち、 はイデアル の生成元である。