物理ノート

サイエンス社「数理科学」SGCライブラリの読書メモ

トポロジー入門

SGCライブラリ - 42

トポロジー入門

田中利史・村上斉 共著

2005年9月25日 初版発行

単体的複体

単体

  •  {x} を始点とし  {y} を終点とするベクトルを  {\vec{xy}} と書く。
  • 原点を始点とし、 {x} を終点とするベクトルを  {\vec{x}} と書く。

 {N} 次元ユークリッド空間  {\mathbb{R}^N} の中に  {n + 1} 個の点  {v_0,v_1,\dots,v_n} があって、 {n} 個のベクトル  {\vec{v_0v_1},\,\vec{v_0v_2},\,\dots,\,\vec{v_0v_n}} が1次独立であると仮定する。

 {\sum_{i=0}^na_i\vec{v_i}} で表される点全体を  {|v_0,v_1,\dots,v_n|} と書き、 {\{v_0,v_1,\dots,v_n\}} を頂点とする  {n} 次元単体、あるいは  {n}-単体という。

  •  {\sum_{k=1}^na_k = 1}
  •  {a_l \ge 0} {l = 1,2,\dots,n}

 {n} 次元単体  {\sigma} の頂点から  {m} 個選んで、それらを頂点とする  {m} 次元単体  {\tau} {\sigma} の面単体と呼ぶ。

単体  {\tau} が単体  {\sigma} の面単体であるとき、 {\tau \prec \sigma} と表す。

単体的複体

ユークリッド空間  {\mathbb{R}^N} の中にある単体の集合  {K} が次の条件をみたすとき、 {K} を単体的複体という:

  • ある単体  {\sigma} {K} に含まれるなら、 {\sigma} のすべての面単体も  {K} に含まれる。
  •  {K} に含まれる2つの単体  {\sigma,\,\tau} の共通部分  {\sigma \cap \tau} が空でないなら、それは  {\sigma} の面単体であり、かつ、 {\tau} の面単体でもある。

単体的複体  {K} に含まれる単体の最大の次元を  {K} の次元といい  {\dim(K)} と書く。

単体的複体  {K} に含まれる  {n} 次元以下の単体を全部集めたものを  {K^{(n)}} と書き、 {K} {n}-切片と呼ぶ。

単体的複体  {K} に対して、 {K^{(n)}} は単体的複体になる。

 {I} {1} 次元単体とし、その頂点を  {\{0,1\}} と書く。

  •  {n} 次元単体  {\sigma^n = |v_0,v_1,\dots,v_n| \in \mathbb{R}^N}
  •  {\mathbb{R}^N \times \{0\} \subset \mathbb{R}^{N+1}} に含まれる  {(n+1)} 個の点  {(v_i,0)} {\underline{v_i}} と書く。
  •  {\mathbb{R}^N \times \{1\} \subset \mathbb{R}^{N+1}} に含まれる  {(n+1)} 個の点  {(v_i,1)} {\overline{v_i}} と書く。

 {n+1} 個の  {(n+1)}-単体  {|\underline{v_0},\underline{v_1},\dots,\underline{v_j},\overline{v_j},\overline{v_{j+1}},\dots,\overline{v_n}|} およびその面単体全体からなる単体的複体を  {\sigma^n \times I} と書き、 {\sigma^n} の柱体と呼ぶ。

一般に単体的複体  {K} が与えられたとき、その柱体  {K \times I} を以下で定義する:

 {\displaystyle K \times I := \bigcup_{\sigma \in K}\sigma \times I}

単体分割

単体的複体  {K} の単体に含まれる点全体からなる集合を、 {\mathbb{R}^N} の部分空間とみなしたものを  {K} の多面体といい  {|K|} で表す。

逆に、単体的複体  {K} は、距離空間  {|K|} の三角形分割あるいは単体分割という。

  •  {n} 次元単体の多面体と同相な距離空間を  {n} 次元球体と呼び、 {D^n} と書く。
  •  {n+1} 次元単体の、自分自身以外の面単体全体の作る単体的複体の多面体と同相な距離空間を  {n} 次元球面と呼び、 {S^n} と書く。

単体写像

 {K,\,L} を単体的複体とする。

 {\Phi} {K^{(0)}} から  {L^{(0)}} への写像で、以下の条件をみたすものとする:

  •  {K} に含まれる任意の単体  {\sigma = |v_0,v_1,\dots,v_n|} に対し、集合  {\{\Phi(v_0),\Phi(v_1),\dots,\Phi(v_n)\}} {L} のある単体の頂点になっている。

このとき、 {\Phi} {K} から  {L} への単体写像という。

単体写像  {\Phi: K \to L} が与えられたとき、多面体  {|K|,\,|L|} の間の写像  {|\Phi|} を、 {|K|} の単体  {\sigma = |v_0,v_1,\dots,v_n|} 内の点  {\sum_{i=0}^na_i\vec{v_i}} に対しては  {\sum_{i=0}^na_i\vec{\Phi(v_i)}} となるように定義する。

写像  {|\Phi|: |K| \to |L|} を、単体写像  {\Phi} から誘導された写像という。

重心細分

 {n} 次元単体  {\sigma := |v_0,v_1,\dots,v_n|} 内の点  {\displaystyle \frac{1}{n + 1}\sum_{i=0}^n\vec{v_k}} {\sigma} の重心といい、 {\widehat{\sigma}} と書く。

 {n} 次元単体  {\sigma} に対して、以下の単体的複体を  {\sigma} の重心細分といい、 {D(\sigma)} と書く:

 {\left\{|\widehat{\tau_1},\widehat{\tau_2},\dots,\widehat{\tau_k}|\,|\,\tau_1 \precneqq \tau_2 \precneqq \cdots \precneqq \tau_k \prec \sigma \quad (1 \le k \le n)\right\}}

単体的複体  {K} 内の単体を重心細分して得られる単体をすべて集めてできる単体的複体を  {K} の重心細分と呼び、 {D(K)} で表す。

重心細分を繰り返すことによって、単体をいくらでも小さくすることができる。

  • 単体  {\sigma} に含まれる2点間の距離の最大値を直径と呼び、 {\mathrm{diam}\,(\sigma)} で表す。
  • 単体的複体  {K} に含まれる単体の直径の最大値を粗さといい、 {\mathrm{mesh}\,(K)} で表す。

 {n} 次元単体  {\sigma} とその細分  {D(\sigma)} に対し、以下が成り立つ。

 {\displaystyle \mathrm{mesh}\,(D(\sigma)) \le \frac{n}{n + 1}\mathrm{diam}\,(\sigma)}

単体的複体  {K} に対し、 {\mathrm{mesh}\,(D(K)) \lt \mathrm{mesh}\,(K)} である。

任意の  {\delta \gt 0} に対して  {d} を十分大きくとれば  {\mathrm{mesh}\,(D^d(K)) \lt \delta} とできる。

  •  {D^d(K)} {K} {d} 回重心細分して得られる単体的複体。

単体近似

 {n} 次元単体  {\sigma = |v_0,v_1,\dots,v_n|} に対し、 {\sum_{i=0}^na_i\vec{v_i}} {a_i \gt 0} かつ  {\sum_{i=0}^na_i = 1})をみたす点全体を  {\mathrm{Int}\,(\sigma)} で表し、 {\sigma} の内部と呼ぶ。

単体から内部を除いた部分を境界といい  {\partial(\sigma)} と書く。

単体的複体  {K} とその多面体  {|K|} を考える。

 {|K|} の点  {x} に対し、 {x} を含むような単体の内部の合併集合を  {x} {K} における開星状近傍と呼び、 {\mathrm{St}\,(x;K)} と書く。

 {|K|} の部分集合  {A} に対して  {\bigcup_{x \in A}\mathrm{St}\,(x;K)} を、 {A} {K} における開星状近傍と呼び、 {\mathrm{St}\,(A;K)} と書く。

単体的複体  {K} {A \subset |K|} に対して  {\mathrm{St}\,(A;K)} {|K|} の開集合である。

単体近似

多面体  {|K|,\,|L|} および連続写像  {f: |K| \to |L|} を考える。

単体写像  {\Phi: K \to L} {f} の単体近似であるとは、以下が成り立つことである:

  • 任意の  {x \in |K|} に対して、 {f(x)} {L} の単体  {\tau} に含まれるなら  {|\Phi|(x)} {\tau} に含まれる。

この条件は次と同値である:

  •  {K} の任意の頂点  {v} に対し、 {f(\mathrm{St\,(v;K)}) \subset \mathrm{St}\,(\Phi(v);L)}

任意の連続写像  {f: |K| \to |L|} に対して、 {d} を十分大きく取れば、単体近似  {\Phi: D^d(K) \to L} が存在する。

鎖複体とホモロジー群

単体的複体のホモロジー群

ホモロジー群の性質

ホモロジー群の位相不変性

基本群

連続写像のホモトピー類

被覆空間