非平衡統計力学
SGCライブラリ - 54
非平衡統計力学
早川尚男 著
2007年3月25日 初版発行
初等気体論とボルツマン方程式
剛体球の2体散乱を考える。
速度 の剛体球分子は散乱によって に変わるとする。
- :相対速度ベクトル
- :共通法線ベクトル
単位時間あたりに速度が の間にある分子と の間にある分子との衝突で に散乱される確率:
- 衝突パラメータ
- 散乱断面積
ハードコア分子のとき
稀薄気体の2体衝突では、エネルギー保存則から相対速さは衝突前後で変化せず、 が成立する。
位相体積の保存より
なので、衝突による分布関数の変化率 は
分布関数の時間変化は一般に以下のようにかける。
- :外力
分布関数の時間発展(ボルツマン方程式):
H 定理とエントロピー
外力のない系のボルツマン方程式:
H 関数は以下で定義される。
H 定理
H 関数は断熱系でのボルツマン方程式において単調非増加関数であり、 という関係でエントロピー と結びつく。
また、 となるのは平衡分布すなわちマクスウェル分布のときのみである。
ボルツマン方程式と流体方程式
衝突不変量の積分:
- 密度
- 流速
- 温度
外力のない系のボルツマン方程式を積分することで、質量の保存則が得られる。
流体の運動方程式:
- ストレステンソル:
- (質量)密度: