ネットワーク科学への招待
SGCライブラリ - 65
ネットワーク科学への招待
世界の“つながり”を知る科学と思考
青山秀明・相馬亘・藤原義久 共編著
2008年7月25日 初版発行
物理・数理
振動子ネットワーク
1振動子に周期外力が作用する系を考える。
外力の作用の強さ の1次摂動に対する運動方程式:
- :振動子の位相
- :振動子の固有振動数
- : の 周期関数
位相差 で書き換えると
振動数のミスマッチ が外力の大きさ()よりも小さい場合、 なる安定解が必ず存在する。()
したがって、振動子は周期外力に引き込まれ、外力の振動数と完全に一致した振動数を持つようになる。
サイズが のネットワーク系を考える。
振動子の固有振動数は一様に であるが、振動子 が振動数 を持つペースメーカーから直接接続を受けていると仮定する。
for
for
- 結合行列 の各要素 は か の値をとる。
- 平均次数 は各振動子の持つ総入力数の平均
- 正の定数 は結合の強さ
結合強度 を上げていくと、内部の同期性を保ちながら、次第にペースメーカーの振動数に近づいていく。
ある結合強度()で全集団が一気にペースメーカーに引き込まれる。
結合強度をさらに上げると、引き込みは保たれたまま、ペースメーカーと振動子集団との位相差が小さくなっていく。
ランダム・ウォーク
同じ頂点から始まるランダム・ウォークを多数回走らせて、何らかの統計量を問う。
- 時刻 における出発点 からの距離の分布
- それまでに訪れた頂点数の分布
- 再び に戻ってくる確率
- 初めて に戻る確率
- 初めて頂点 に達する確率
の生成関数を定義する:
のとき、ランダム・ウォークは再帰的であるという。
再帰的であることは であることと同値である。
ゴルトン・ワトソン木
頂点次数 が頂点ごとに独立に、前もって用意した次数分布 に従って決められたグラフ上の、ある1点 O を起点とするランダム・ウォークを考える。
を時刻 でウォーカーが初めて O に帰る確率とする。()
の生成関数 :
ゴルトン・ワトソン木上のランダム・ウォークは非再帰的と知られているので、 である。
各部分木ウォークの長さ(O' から出発して O' に戻る)の分布は、元のランダム・ウォークが O から出発して O に初めて戻るまでの時間の分布に等しいと近似する。
ただし、 についての和は、 となるような についてのみとする。
となる解を探すために右辺を展開する。
ラグランジュの反転公式
と置き、 は の近傍で解析的とする。
もし、もう一つの関数 が無限回微分可能ならば
、、 として公式を用いる:
- は の自然数への分割
- 分割 は、 が に 個含まれ…という意味
- は の分割 のうち、 となるものだけについての和を表す。
の に比例する項のみが生き残るので、 の項だけ取り出せばよい。