物理ノート

サイエンス社「数理科学」SGCライブラリの読書メモ

物理のためのリー群とリー代数

SGCライブラリ - 66

物理のためのリー群とリー代数

窪田高弘 著

2008年9月25日 初版発行

序論

集合  {G} が群であるとは、 {G} が次の性質を満たす場合のことである。

  •  {\forall a,\forall b \in G} に対して演算  {\circ} が定義されており、 {a \circ b \in G} である。
  • 演算  {\circ} は結合法則  {(a \circ b) \circ c = a \circ (b \circ c)} を満たす。
  •  {\forall a \in G} に対して  {a \circ e = e \circ a = a} を満たす  {e \in G} が存在する。
  •  {\forall a \in G} に対して  {a \circ a^{-1} = a^{-1} \circ a = e} を満たす  {a^{-1} \in G} が存在する。

実数体  {\mathbb{R}} あるいは複素数体  {\mathbf{C}} 上の  {n \times n} の正則行列の集合をそれぞれ  {GL(n,\mathbf{R})} {GL(n,\mathbf{C})} と書く。

 {G} から  {GL(n,\mathbf{R})} または  {GL(n,\mathbf{C})} への写像  {D: a \in G \to GL(n,\mathbf{R})} or  {GL(n,\mathbf{C})} が以下を満たすとき、 {D} は群  {G} {n} {n} 列の表現であるという:

 {D(a)D(b) = D(a \circ b) \quad \forall a,\forall b \in G}

 {G} の表現が、すべての  {a \in G} に対して適当な相似変換によって

$$ D(a) = \begin{pmatrix} D_1(a) & X(a) \\ 0 & D_2(a)\end{pmatrix} $$

という形にできるとき、この表現は可約表現であるという。

可約でない表現は既約表現であるという。

特に、群の表現が相似変換によって以下の形にできるとき、その表現は完全可約であるという:

$$ D(a) = \begin{pmatrix} D_1(a) & 0 \\ 0 & D_2(a) \end{pmatrix} $$

 {G} の表現  {D} がユニタリーであるならば、その表現は完全可約である。

連続変換群

 {n} 個の変数の組  {x_0} を以下の公式で  {x} に変換することを考える。

 {x = f(x_0;a)}

  •  {x_0 = (x_0^1,x_0^2,\dots,x_0^n)}
  •  {x = (x^1,x^2,\dots,x^n)}
  •  {a = (a^1,a^2,\dots,a^r)}

変換の集合は、以下の条件を満足するときに群をなすという:

  •  {x = f(x_0;a),\,x^{\prime} = f(x;b)} という関係があるとき、 {x^{\prime} = f(x_0;\varphi(a;b))} という関係式を満足するパラメータ  {c^{\rho} = \varphi^{\rho}(a;b)} が必ず存在する。
  •  {\varphi^{\rho}(\varphi(a;b);c) = \varphi^{\rho}(a;\varphi(b;c))}(結合法則)
  •  {x = f(x;e),\,\forall x} を満足する  {e} が存在する。(単位元)
  •  {x_0 = f(x;\bar{a}),\exists \bar{a}} を満足する  {\bar{a}} が存在する。(逆元)

 {c^{\rho} = \varphi^{\rho}(a;b)} {a,\,b} について連続であるとき、この群を連続変換群と呼ぶ。 特に、 {a,\,b} についてある回数、微分可能である場合、この群のことをリー群と呼ぶ。

リー代数

ベクトル空間の任意の元  {X,\,Y} に対して以下の性質を満たす交換子  {[X,Y]} が定義されていて、かつ  {[X,Y]} がもとのベクトル空間の元であるならば、この空間はリー代数であるという:

  •  {[X,Y] = -[Y,X]}
  •  {[aX,Y] = [X,aY] = a[X,Y]}
  •  {[X + Y,Z] = [X,Z] + [Y,Z]}
  •  {[X,[Y,Z]] + [Y,[Z,X]] + [Z,[X,Y]] = 0}

リー代数の任意の元  {X} を、正方行列に対応させる写像を  {\sigma(X)} とする。

 {\sigma(X)} が以下の性質を満足するとき、写像  {\sigma(X)} をリー代数の表現であるという:

  •  {\sigma(X + Y) = \sigma(X) + \sigma(Y)}
  •  {\sigma(cX) = c\sigma(X)}
  •  {[\sigma(X),\sigma(Y)] = \sigma([X,Y])}

線形リー群とそのリー代数

単純リー代数の分類

3次元空間の回転と角運動量

回転群の表現

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群上の積分

ハドロンの分類

ゲージ相互作用の統一的記述

ローレンツ群