ランダム行列とゲージ理論
SGCライブラリ - 127
ランダム行列とゲージ理論
〈普遍性〉を通して捉える量子物理
西垣真祐 著
2016年9月10日 初版発行
プロローグ:量子論とカオス
古典的カオス
位相空間の1点 を始点とするベクトルの組
微小時間 が経過して が に移動したとき、 を無限小パラメータとして はそれぞれ に移動したとする。
リウヴィユの定理より なので、 の 個の固有値を と表すと となる。
点における をリアプノフ指数と呼ぶと、それらの実部は以下のいずれかである:
- 全て0
- 少なくとも一つが正、一つが負
位相空間の全ての点が少なくとも一つの実部正のリアプノフ指数をもつとき、力学系は古典的カオス系であると定義する。
量子的カオス
古典カオス系のハミルトニアンから正準交換関係を課すことにより量子力学を構成する。
ハイゼンベルクの不確定性関係は、古典力学における、位相空間での「いくらでも複雑に折り畳まれた構造への時間発展」とは相容れない。
量子化は古典力学におけるカオス性を抑える方向に働くため、それに基づいて波動関数のエネルギー固有値に対する定量的予言が可能になる。
ワイルの法則
中の有界閉領域中を運動する質点(ビリヤード)を考える。
エネルギー固有値が微小範囲 に含まれる状態の数として状態密度 を定義する。
面積 のビリヤードの状態密度は定数に漸近する:
ランダム行列
ツィルンバウアーの十道
対合的対称性によるエルミート行列 の分類
- : 反ユニタリー変換と可換
- : 反ユニタリー変換と反可換
- : ユニタリー変換と反可換
ヒルベルト空間が有限次元であると仮定する。
行列の属性 | 対象空間 | クラス | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
: -エルミート | A | 2 | ||||
: -対称 | AI | 1 | ||||
: -自己双対 | AII | 4 | ||||
: -歪対称 | BD | 2 | ||||
: -対称 | C | 2 | ||||
: | AIII | 2 | ||||
: | BDII | 1 | ||||
: | CII | 4 | ||||
: -歪対称 | DIII | 1 | ||||
: -対称 | CI | 4 |
$$ H = \begin{pmatrix} W & Z \\ Z^{\dagger} & -W^T \end{pmatrix} ,\quad W = W^{\dagger} $$
ダイソン指数 は の非対角要素が持つ実成分の数を表す。
固有値分布関数
準位統計関数
クリストッフェル–ダルブー公式
スケーリング極限
調和振動子の定常的シュレーディンガー方程式
レプリカ法と非線形 模型
カラー–フレーバー変換