物理ノート

サイエンス社「数理科学」SGCライブラリの読書メモ

例題形式で探求する代数学のエッセンス

SGCライブラリ - 136

例題形式で探求する代数学のエッセンス

方程式から拡がる世界

小林正典 著

2017年9月25日 初版発行

方程式の複素数解

除法の原理

 {f(x), g(x)} {K} 係数多項式とし、 {g(x) \neq 0} のとき、

 {f(x) = q(x)g(x) + r(x)}

となる  {K} 係数多項式  {q(x)} {g(x)} より低次の  {K} 係数多項式  {r(x)} が一意的に存在する。

 {f(x) = q(x)g(x)} となるとき、 {g(x)} {f(x)} を割り切るといい、 {g(x)\,|\,f(x)} と表す。

 {f(x)} {g(x)} の倍元、 {g(x)} {f(x)} の約元であるという。

剰余定理

多項式  {f(x)} {x - \alpha} で割った余りは  {f(\alpha)} に等しい。

因数定理

 {(x - \alpha)\,|\,f(x) \,\Longleftrightarrow\, f(\alpha) = 0}

分母の有理化

 {K} を体とし、文字  {x} に関する  {K} 係数多項式の全体を  {K[x]} で表す。

 {\alpha} を体  {K} 上代数的な数とする: {g(x)\,(\neq 0)} {g(\alpha) = 0} となるものが存在する。

 {g(x)} のうち、次数が最小のものを 1 つとり  {m(x)} とする。

 {m(x)} {\alpha} {K} 上の最小多項式と呼ばれる。

因数定理:拡張版

 {\alpha} {K} 上代数的な数、 {m(x)} {\alpha} {K} 上の最小多項式とする。

このとき、 {f(x) \in K[x]} に対し次が成り立つ。

 {f(\alpha) = 0 \,\Longleftrightarrow\, m(x)\,|\,f(x)}

定数でない多項式  {f(x) \in K[x]} は、定数でない  {g(x),h(x) \in K[x]} を用いて  {f(x) = g(x)h(x)} の形に書けないとき、 {K} 上既約であるという。

 {\alpha} を体  {K} 上代数的な数とし、 {f(x) \in K[x]} はモニックで  {f(\alpha) = 0} を満たすとすると、次が成り立つ。

 {f(x)} {\alpha} {K} 上の最小多項式  {\Longleftrightarrow}  {f(x)} {K} 上既約

 {K} 係数多項式の比  {g(\alpha)/f(\alpha)} で表せる数( {K} 係数有理式)の全体を  {K(\alpha)} で表す。

 {K(\alpha)} は体である。

次は同値である。

  •  {\alpha} {K} 上代数的である。
  •  {K[\alpha]} は体である。(つまり  {K(\alpha) = K[\alpha]}

よって、代数的数の有理式は、分母が有理数(整数)にできることが保証される。

2 つの剰余定理

余りを点での値に置き換える剰余定理:

一般化された剰余定理

 {\alpha} を実数、 {m} を正整数とする。

実数係数多項式  {f(x)} {(x - \alpha)^m} で割った余りは  {\sum_{i=0}^{m-1}\frac{f^{(i)}(\alpha)}{i!}(x - \alpha)^i} で与えられる。

余りを各点(素数)での値(余り)に分解する剰余定理:

中国式剰余定理

 {I_1,\dots,I_n} を単位的可換環  {R} の互いに素なイデアルとするとき、次の同型が存在する。

 {R/I_1 \cdots I_n \cong (R/I_1) \times \cdots \times (R/I_n)}

 {K} 上の多項式環  {K[x]} において、 {\alpha \neq \alpha^{\prime}} のとき  {(x - \alpha)^m} {(x - \alpha^{\prime})^{m^{\prime}}} は互いに素である。

 {\alpha_1,\dots,\alpha_k \in K} は相異なるとし、 {m_1,\dots,m_k} を正の整数とする。

 {f(x) = (x - \alpha_1)^{m_1}\cdots(x - \alpha_k)^{m_k} \in K[x]} に対し次の同型がある。

 {K[x]/(f(x)) \cong K[x]/((x - \alpha_1)^{m_1}) \times \cdots \times K[x]/((x - \alpha_k)^{m_k})}

次数が  {f(x)} より小さい多項式は、中国式剰余定理により因子  {(x - \alpha_i)^{m_i}} たちで割った余りの組と一対一対応する。

後者は、一般化された剰余定理によって  {\alpha_i} における  {m_i - 1} 次までの微分係数で決まる。

したがって、 {d + 1\,(= \deg f)} 個分の剰余の条件を与えたとき、高々  {d} 次で条件を満たす多項式が唯一つ存在する。

因数分解

可換環  {R} は、0 と異なる乗法の単位元 1 をもち、0 以外に零因子をもたないとき整域という。

  • 単元  {a \in R} {ab = 1} となる  {b \in R} が存在する。
  • 既約元  {p \in R} {p = ab\,(a,b \in R)} ならば  {a} あるいは  {b} が単元となる。
  • 素元  {p \in R} {p\,|\,ab} ならば  {p\,|\,a} または  {p\,|\,b} となる。

 {R} は次の条件 A を満たすと仮定する。

条件 A

任意の主イデアルの昇鎖  {(a_0) \subseteq (a_1) \subseteq \cdots} に対し、ある自然数  {N} が存在して、 {n \ge N} ならば  {(a_n) = (a_N)} となる。

条件 A を満たしているならば、いつかはすべての因子を分解しきることができる。

既約分解

 {R} を条件 A を満たす整域とする。

 {R} の 0 でも単元でもない任意の元  {a} は、 {a = p_1\dots p_k} {k \ge 1,\,p_1,\dots,p_k} は既約元)と表せる。

既約分解の一意性は次のように述べられる。

 {R} を条件 A を満たす整域とすると、次は同値である。

  •  {R} の任意の既約元は素元である。
  • 任意の  {a,b \in R} に対し、最大公約元が存在する。
  • 0 でも単元でもない  {a \in R} の既約分解  {a = p_1\cdots p_k} において、既約元  {p_1,\dots,p_k} は単元倍と並べる順序を除き一意的に  {a} から定まる。

0 でも単元でもない任意の元に対し既約分解が存在して単元倍と並べる順序を除いて一意的である整域を、素元分解整域・一意分解整域(UFD)という。

素因数分解の存在と一意性

0 でない任意の整数  {a} に対し  {a = \pm p_1\cdots p_k} となる非負整数  {k}、素数  {p_i}  {(1 \le i \le k)} が存在する。

 {p_1,\dots,p_k} は順序を除いて  {a} から一意的に定まる。

共役元とノルム

 {\alpha} を体  {K} 上代数的な数とする。

 {\alpha} {K} 上の最小多項式  {m(x)} の任意の根  {\beta} に対し、 {m(x)} {\beta} {K} 上の最小多項式でもある。

同じ最小多項式をもつ元は  {K} 上共役であるという。

 {\alpha} {K} 上の共役元すべての積  {N(\alpha)} {\alpha} {K} 上のノルムと呼ぶ。

解と係数の関係

解と係数の関係

 {K} 上のモニックな  {n} 次方程式

 {x^n + a_{n-1}x^{n-1} + \cdots + a_1x + a_0 = 0}

の解を重複度を込めて  {\alpha_1,\dots,\alpha_n} とするとき、次が成り立つ。

 {\displaystyle \sum_{1 \le i_1 \lt \cdots \lt i_k \le n}\alpha_{i_1}\cdots\alpha_{i_k} = (-1)^ka_{n-k}\quad (k = 1,\dots,n)}

左辺の和は  {\alpha_1,\dots,\alpha_n} から相異なる  {k} 個を選ぶ方法すべてに関する和であり、 {{}_nC_k} 個の項からなる。

判別式

 {K} に係数をもつ  {n} 次式  {f(x)} は、適当な有限拡大体において  {f(x) = a(x - \alpha_1)\cdots(x - \alpha_n)} と因数分解できる。

 {\alpha_1,\dots,\alpha_n} {f(x)} の根という。

 {n \ge 2} のとき、根のうち等しいものがある条件(重根条件)は、 {\alpha_i = \alpha_j}  {(1 \le i \lt j \le n)} の何れかが成り立つことであるから、 {\alpha_1,\dots,\alpha_n} の差積  {\Delta = \prod_{i,j;i \lt j}(\alpha_j - \alpha_i)} が 0 となることと同値である。

 {f(x) = a(x - \alpha_1) \cdots (x - \alpha_n)} に対し  {D := a^{2n - 2}\Delta^2} は根の対称式であり、根の並べ方によらない。

 {D} {f(x)} の判別式と呼ぶ。

多項式  {f(x) = a(x - \alpha_1) \cdots (x - \alpha_n)} {g(x) = b(x - \beta_1) \cdots (x - \beta_m)}  {(a,b \neq 0)} に対し、 {R(f,g) := a^mb^n\prod_{i=1}^n\prod_{j=1}^m(\alpha_i - \beta_j)} を終結式という。

終結式に対して、次が成り立つ。

  •  {f} {g} が共通根をもつ  {\Longleftrightarrow}  {R(f,g) = 0}
  •  {f} が重根をもつ  {\Longleftrightarrow}  {R(f,f^{\prime}) = 0}
  •  {R(f,g) = a^m\prod_{i=1}^ng(\alpha_i) = (-1)^{mn}b^n\prod_{j=1}^mf(\beta_j)}
  •  {R(f,f^{\prime}) = (-1)^{n(n-1)/2}aD}

二重根号

1 のべき根

軌道分解

自己同型群

ガロアの基本定理

解の公式

軌跡

連立 1 次方程式

連立 1 次不等式

図形と式

1 + 1 = 1

グラフ