格子場の理論入門
SGCライブラリ - 140
格子場の理論入門
大川正典・石川健一 共著
2018年4月25日 初版発行
1 次元の多粒子系と場の理論
1 次元結晶系
- 格子間隔:
- 原子数:
- 周期的境界条件:
1 次元結晶系は 個の調和振動子の集まりと等価:
連続時空での場の理論を考えるために、形式的に連続極限 を取ってみる。
を固定した周期的境界条件での量子論の連続極限を考える。
全系のハミルトン演算子
連続時空の場の理論では、自由度が無限なことに起因する発散が現れる。
強い相互作用を記述する場の理論は連続時空では直接定義できず、格子場の理論を使って定式化した後に連続極限を取る手続きが必要になる。
経路積分
2 次元格子を次のように定義する。
- 2 次元格子の格子点は の 2 つの整数の組で指定する。
- 方向の格子数を とし、 とする。
- 方向の格子数を とし、 とする。
- 方向、 方向の両方に周期的境界条件を次のように課す:
- 方向の格子間隔を とし、 方向の格子間隔を とする。
簡単のため、 とする。
格子上の作用:
- 方向の単位ベクトル:
- 方向の単位ベクトル:
点相関関数:
トランスファー演算子
4 次元連続時空のスカラー場を で定義する。
場の演算子 とその固有状態 を で定義し、 に共役な運動量演算子 を で定義する。
トランスファー演算子 :
格子上のハミルトニアン は
で定義され、 の極限で連続時間のハミルトニアンに一致する。
摂動論
自由場の作用:
格子場 と結合する外場 を導入し、関数 を次で定義する。
相互作用がある場合:
を で 回偏微分すると、相互作用がある場合の 点相関関数が得られる。
場の理論の摂動論は、相互作用ラグランジアンが小さいとして、 をテイラー展開して得られる。
くりこみとくりこみ群
場の変数を規格化し直し、くりこまれた場 を定義する。
くりこまれた 点相関関数:
- と は と の関数
- くりこまれた結合定数:
- くりこまれた質量:
くりこみ可能な理論では、 を と の関数とみなしたとき、 に発散が現れないようにできる。
と を固定すると、 は格子間隔 の関数なので と書く。
はあたかも運動量スケール でくりこまれた、結合定数 のように振る舞う。
は結合定数のスケール依存性を表す量で、理論のベータ関数と呼ばれる。
格子上での非摂動論的くりこみ群
運動量が 0 の場 を考える。
真空からの寄与を差し引いた 2 点の連結相関関数:
- 指数関数的減少の大きさを表す「相関距離」:
- 物理的質量:
有限な質量を持つ連続理論を作るためには、連続極限 を取るとき同時に相関距離 を無限大に持っていかなければならない。
作用空間
格子上の理論が、場の変換 に対して不変だとする。
に対して不変なオペレーター を用意する。
は一次独立な完全性をなすものとし、作用は で展開できるとする。
によって張られる空間を作用空間と呼ぶ。
スケールが の「くりこみ変換」 を、この作用空間上の連続写像 で を満たすものとして定義する。
作用空間の中で連続極限が取れるのは、相関距離 が無限大となる臨界面 の近傍だけである。
くりこみ変換によって不変な臨界面上の点 はくりこみ変換の固定点と呼ばれる。
臨界面 上の全ての点は、固定点 と同じ連続理論を与える。