物理ノート

サイエンス社「数理科学」SGCライブラリの読書メモ

複雑系科学への招待

SGCライブラリ - 141

複雑系科学への招待

坂口英継・本庄春雄 共著

2018年5月25日 初版発行

複雑な動き

ポピュレーションダイナミクス

食糧が十分にあると人口や生物の数は一定の割合で増殖する:マルサス増殖

 {z_{n + 1} = az_n}

  •  {n} 年の人口: {z_n}
  • 増殖率: {a}

人口が増えすぎると食糧が不足するようになる。

 {z_n} が大きくなると、 {a} {a(1 - z_n/N)} のように減少すると仮定する。

 {\displaystyle z_{n+1} = a\left(1 - \frac{z_n}{N}\right)z_n}

 {x_n = z_n/N} と変数を置き換えた数理モデルをロジスティック写像と呼ぶ。

 {x_{n + 1} = ax_n(1 - x_n)}

  •  {a \lt 1} のとき、 {n} を十分大きくすると  {x_n \to 0} に漸近する。
  •  {1 \lt a \lt 3} のとき、 {x_n} {1 - 1/a} に漸近する:安定な定常解
  •  {3 \lt a \lt 3.4494897\cdots} のとき、定常解が不安定化して 2 周期解になる。
  • さらに  {a} を大きくすると、周期が倍々に増える分岐が無限に続く: {2^n} 分岐
  •  {a} {a_{\infty} = 3.56994\cdots} 以上では、不規則な運動を続ける状態になる:カオス

オピニオンダイナミクス

多数の人がまわりの人と相互作用しながら意見を変えていく様子を離散写像でモデル化する。

各個人は賛成(+1)か反対(-1)の意見を持つとする。

 {S_{i,n+1} = \mathrm{sgn}\,[\phi_i + F(t) + KM_n]}

  •  {S_{i,n}}:時刻  {n} におけるある人  {i} の意見
  •  {\phi_i} {i} の人の賛成傾向
  •  {F(t)}:外部要因
  •  {M_n} {S_{i,n}} の平均値
  •  {K}:まわりの人との相互作用の強さを表すパラメータ

複雑なパターン

フラクタル

部分と全体が相似な図形をフラクタル図形という。

全体を  {1/a} 倍した図形を  {b} 個集めてもとの図形が構成されるとき、フラクタル次元は以下で定義される。

 {\displaystyle D = \frac{\log b}{\log a}}

フラクタル次元の求め方:ボックスカウント法

  • 間隔  {r} のメッシュに空間を分割する。
  • 考える図形を覆うために最低限必要な正方形の数を  {N(r)} とする。
  • フラクタル次元はボックスの数  {N(r)} とスケール  {r} の関係から求められる。

 {\displaystyle D = \lim_{r \to 0}\frac{\log N(r)}{\log 1/r}}

べき分布

地震の発生確率とマグニチュードの関係:グーテンベルグ-リヒター則

 {P(M) \propto 10^{-bM}}

  • 地震の数: {P}
  • 地震のマグニチュード: {M}
  • マグニチュードとエネルギーの関係: {\log_{10}E = 1.5 M + A}

エネルギーと発生頻度の関係はべき分布になる。

 {\displaystyle P(E) = P(M)\frac{dM}{dE} \propto E^{-(2/3)b - 1} = E^{-\alpha}}

複雑ネットワーク

スモールワールドネットワーク:

  • 平均距離が小さく、クラスター性が高いネットワーク
    • 人間関係のネットワーク(6 次の隔たり)
  • 数理モデル
    • すべての頂点の両隣とさらにその両隣をリンクでつなぐ。
    • 各リンクを確率  {p} でランダムに別の頂点とつなぎかえる。
    • これを繰り返す。

スケールフリーネットワーク:

  • リンク数の分布がべき分布になるネットワーク
    • ホームページのリンクでできたネットワーク
  • 数理モデル
    • 新たな点  {i} を置く。
    •  {i} から新たに  {m} 個のリンクを張る。
    • どのサイト  {j} にリンクを張るかは  {j} のリンクの数  {k_j} に比例するとする。
    • これを繰り返す。

セルオートマトン

セルオートマトンは格子上で 0 と 1 のような離散的な状態を取り、単純な規則により離散的に時間発展する系である。

自分、両隣、2 つ隣の 5 格子のなかで 1 状態をとる格子の数によって次の状態が決まるという時間発展ルールを考える。

  • 5 格子がすべて 0 の場合は次の状態は 0 になるとする。
  • ルールの数は  {2^5 = 32} 通りになる。

その振る舞いは 4 つのクラスに分類できる。

  • 秩序状態:安定した定常状態に落ち込む。
  • 空間局在静止状態または周期的状態に落ち着く。
  • カオス状態:セル全体がランダムな状態になる。
  • 規則的状態とカオス的状態が共存し、複雑なパターンを形成する。

生命現象と複雑系

非線形微分方程式

協力現象とゆらぎ

自己組織化

ニューラルネットワーク