例題形式で探求する複素解析と幾何構造の対話
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例題形式で探求する複素解析と幾何構造の対話
志賀啓成 著
2020年5月25日 初版発行
複素微分と正則関数
を 内の領域とする。
上で定義された関数 が の各点で微分可能であるとき、 は で正則という。
コーシーの積分定理とその応用
コーシーの積分定理
を 内の領域 上の正則関数とする。
を 内の単純閉曲線で区分的に 級であり、かつ で囲まれた領域が に含まれていると仮定する。
このとき、
である。
等角写像
を 内の 2 つの領域とする。
で定義された正則関数 が を満たし、かつ が 上で 1 対 1 であるとき、 を から の中への等角写像という。
正則関数 が から への全単射になっているとき、 を から の上への等角写像という。
から の上への等角写像が存在するとき、 と は等角同値または双正則同値という。
有理型関数
に無限遠点を加え と記して、これをリーマン球面と呼ぶ。
内の領域 で定義された正則写像 で恒等的に でないものを 上の有理型関数という。
となる点 を の極という。
留数定理
を領域 上の有理型関数とする。
を、境界 が互いに交わらない 内の有限個の区分的に滑らかな閉曲線であるような領域で、 は 上に極を持たないとする。
このとき、
が成り立つ。
孤立特異点と留数
有理型関数の極のように、その点のある近傍が存在して、その点以外で関数 が正則であるとき、これを の孤立特異点という。
が の孤立特異点で、 が の近傍で有界であるとする。
すなわち、ある が存在して、 が で有界とする。
このとき、 は まで正則関数として拡張される。
ある に対し、 が で正則、すなわち が の孤立特異点ならば、 は
と表示される。
の巾が負の部分を のローラン展開の主要部という。
は の における留数とよび、 と書く。
- が の除去可能特異点
- のローラン展開の主要部が 0。
- が の極
- のローラン展開の主要部が有限個の 0 でない項からない。
- が の真性特異点
- のローラン展開の主要部が無限個の 0 でない項からなる。
積分計算、偏角の原理とルーシェの定理
偏角の原理
を 内の領域 で有理型と仮定する。
は 上に極を持たず、またある に対し、 の 点も 上にないと仮定する。
このとき、
は における の 点の個数から の極の個数を引いたものに等しい。
ただし両者とも重複度を込めて数える。
の に沿っての偏角の変化量、すなわち の点 の周りの回転数が での の 点の個数と極の個数の差を表している。
ルーシェの定理
二つの関数 はともに で正則で、任意の に対して、 であると仮定する。
このとき、 と の における零点の個数は等しい。