物理ノート

サイエンス社「数理科学」SGCライブラリの読書メモ

例題形式で探求する複素解析と幾何構造の対話

SGCライブラリ - 159

例題形式で探求する複素解析と幾何構造の対話

志賀啓成 著

2020年5月25日 初版発行

複素微分と正則関数

 {D} {\mathbb{C}} 内の領域とする。

 {D} 上で定義された関数  {f} {D} の各点で微分可能であるとき、 {f} {D} で正則という。

コーシーの積分定理とその応用

コーシーの積分定理

 {f(z)} {\mathbb{C}} 内の領域  {D} 上の正則関数とする。

 {C} {D} 内の単純閉曲線で区分的に  {C^1} 級であり、かつ  {C} で囲まれた領域が  {D} に含まれていると仮定する。

このとき、

 {\displaystyle \int_Cf(z)dz = 0}

である。

等角写像

 {D_1, D_2} {\mathbb{C}} 内の 2 つの領域とする。

 {D_1} で定義された正則関数  {f} {f(D_1) \subset D_2} を満たし、かつ  {f} {D_1} 上で 1 対 1 であるとき、 {f} {D_1} から  {D_2} の中への等角写像という。

正則関数  {f} {D_1} から  {D_2} への全単射になっているとき、 {f} {D_1} から  {D_2} の上への等角写像という。

 {D_1} から  {D_2} の上への等角写像が存在するとき、 {D_1} {D_2} は等角同値または双正則同値という。

有理型関数

 {\mathbb{C}} に無限遠点を加え  {\hat{\mathbb{C}} = \mathbb{C} \cup \{\infty\}} と記して、これをリーマン球面と呼ぶ。

 {\hat{\mathbb{C}}} 内の領域  {D} で定義された正則写像  {f: D \to \hat{\mathbb{C}}} で恒等的に  {\infty} でないものを  {D} 上の有理型関数という。

 {f(a) = \infty} となる点  {a \in D} {f} の極という。

留数定理

 {f} を領域  {D \subset \mathbb{C}} 上の有理型関数とする。

 {\Omega \subset D} を、境界  {\partial\Omega} が互いに交わらない  {D} 内の有限個の区分的に滑らかな閉曲線であるような領域で、 {f} {\partial\Omega} 上に極を持たないとする。

このとき、

 {\displaystyle \int_{\partial\Omega}f(z)dz = 2\pi i\sum_{\substack{a \in\Omega \\ \text{$a$ は $f$ の極}}}\mathrm{Res}(f;a)}

が成り立つ。

孤立特異点と留数

有理型関数の極のように、その点のある近傍が存在して、その点以外で関数  {f} が正則であるとき、これを  {f} の孤立特異点という。

 {z = a} {f} の孤立特異点で、 {f} {z = a} の近傍で有界であるとする。

すなわち、ある  {R \gt 0} が存在して、 {f} {\{z \in \mathbb{C}\,\vert\, 0 \lt \vert z - a\vert \lt R\}} で有界とする。

このとき、 {f} {z = a} まで正則関数として拡張される。

ある  {R \gt 0} に対し、 {f} {\{0 \lt \vert z - a\vert \lt R\}} で正則、すなわち  {z = a} {f} の孤立特異点ならば、 {f}

 {\displaystyle f(z) = \sum_{n = 1}^{\infty}\frac{c_{-n}}{(z - a)^n} + \sum_{n=0}^{\infty}c_n(z - a)^n}

と表示される。

 {z - a} の巾が負の部分を  {f} のローラン展開の主要部という。

 {c_{-1}} {f} {a} における留数とよび、 {\mathrm{Res}(f;a)} と書く。

  •  {a} {f} の除去可能特異点
    •  {\Longleftrightarrow}  {f} のローラン展開の主要部が 0。
  •  {a} {f} の極
    •  {\Longleftrightarrow}  {f} のローラン展開の主要部が有限個の 0 でない項からない。
  •  {a} {f} の真性特異点
    •  {\Longleftrightarrow}  {f} のローラン展開の主要部が無限個の 0 でない項からなる。

積分計算、偏角の原理とルーシェの定理

偏角の原理

 {f} {\mathbb{C}} 内の領域  {D} で有理型と仮定する。

 {f} {\partial\Omega} 上に極を持たず、またある  {a \in \mathbb{C}} に対し、 {f} {\alpha} 点も  {\partial\Omega} 上にないと仮定する。

このとき、

 {\displaystyle \frac{1}{2\pi i}\int_{\partial\Omega}\frac{f^{\prime}(z)}{f(z) - \alpha}dz}

 {\Omega} における  {f} {\alpha} 点の個数から  {f} の極の個数を引いたものに等しい。

ただし両者とも重複度を込めて数える。

 {f(z) - \alpha} {\partial\Omega} に沿っての偏角の変化量、すなわち  {f(\partial\Omega)} の点  {\alpha} の周りの回転数が  {\Omega} での  {f} {\alpha} 点の個数と極の個数の差を表している。

ルーシェの定理

二つの関数  {f,g} はともに  {D} で正則で、任意の  {z \in \partial\Omega} に対して、 {\vert f(z)\vert \gt \vert g(z)\vert} であると仮定する。

このとき、 {f} {f + g} {\Omega} における零点の個数は等しい。

一次分数変換と双曲幾何

双曲幾何学とリーマン面

リーマン面の表現と構造

フックス群とリーマン面

コンパクトリーマン面の変形とフックス群の表現

リーマン面の射影構造とタイヒミュラー空間