幾何学的な線形代数
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幾何学的な線形代数
基礎概念から幾何構造まで
戸田正人 著
2021年5月25日 初版発行
序章
- -ベクトル空間 の元 に対して で定まる写像 を平行移動という。
- 線型写像 との合成 をアフィン写像という。
- とする。部分ベクトル空間 の平行移動 による像 を部分アフィン空間という。
- に対して係数 によるスカラー倍と和を施した形の の元 を( 項の)線型結合という。
- とくに係数が を満たしている線型結合をアフィン結合という。
- アフィン結合に関する条件 と がアフィン写像であることは同値である。
- 上アフィン結合を演算とする構造(アフィン構造)だけを考える場合、 をアフィン空間と呼ぶ。
行列式
- 次の置換
- 次の置換全体
線形変換の不変部分空間
- -ベクトル空間
- 線形変換
部分ベクトル空間 が を満たしているとき は で不変、あるいは は の不変部分空間であるという。
- の定義域を に取り直した写像を への制限といい、 と書く。
ジョルダン標準形
が複素ベクトル空間の場合には の不変部分空間 への直和分解 が存在して、 の表現行列をすべての対角成分が である上三角行列にとることができる。
は直既約な不変部分空間 に直和分解し、 はジョルダンブロックで表現される。
\begin{equation} J_{\lambda} = \begin{pmatrix} \lambda & 1 & & & \\ & \lambda & 1 & & \\ & & \ddots & \ddots & \\ & & & \lambda & 1 \\ & & & & \lambda \end{pmatrix} \end{equation}
の直和分解に現れる のうち与えられた次元を持つものの数も一意的に決まる。
2 次形式
線形変換 が標準的なユークリッド内積 を保つとき を直交変換という。
- 2 次対称形式
- 2 次形式
実ベクトル空間 の基底 に対して が , と表されているとき と書けるから で は決まる。
基底によって が と同一視されているとき、 を 次対称行列 の 成分とみなせば には 上の 2 次対称形式が対応する。
をこの基底に関する の表現行列と呼ぶ。
- :実ベクトル空間 上の 2 次対称形式
- の正(負)定値部分ベクトル空間の最大次元を ()
- の半正(負)定値部分ベクトル空間の最大次元を ()
- すべての のベクトルと直交するベクトルのなす部分ベクトル空間
最大次元の正(負)定値部分ベクトル空間 ()が存在して と直交分解する。
- 表現行列
\begin{equation} I_{k,l}^n = \begin{pmatrix} E_k & & \\ & -E_l & \\ & & O_{n-k-l} \end{pmatrix} \end{equation}
- 次の単位行列
- 零行列
基底のとり方によらず となる。
や を -型の 2 次(対称)形式と呼ぶ。
ローレンツ変換
- ローレンツ内積:-型の非退化 2 次形式
- 上の 2 次形式 と等価。
ローレンツ内積 に関する直交変換をローレンツ変換と呼ぶ。
ローレンツ変換 の正規直交基底に関する表現行列 は以下を満たす。
\begin{equation} {}^tALA = L,\quad L := \begin{pmatrix} E_{n-1} & \mathbf{o} \\ {}^t\mathbf{o} & -1 \end{pmatrix} \end{equation}
対称変換
- 次元実ベクトル空間
- 上の非退化 2 次対称形式(計量)
- を と略記する。
- を と略記する。
- 上の 2 次対称形式
は の線形変換(対称変換) を定める。