物理ノート

サイエンス社「数理科学」SGCライブラリの読書メモ

作用素環と無限量子系

SGCライブラリ - 111

作用素環と無限量子系

よりよい理解のために

松井卓 著

2014年9月25日 初版発行

無限自由度の量子系での表現の同値性

  • ヒルベルト空間  {\mathcal{H}}
  •  {\mathcal{H}} のベクトル  {\xi} {\eta} の内積  {(\xi,\eta)}
  •  {\mathcal{H}} のベクトル  {\eta} のノルム  {||\eta||_{\mathcal{H}} = \sqrt{(\eta,\eta)}}
  •  {\mathcal{H}_1} から  {\mathcal{H}_2} への有界線形作用素  {Q}
  • 作用素ノルム  {||Q|| = \sup\{||Q\eta||\,|\, \eta \in \mathcal{H}_1,\,||\eta||_{\mathcal{H}_1} \le 1\}}
  •  {\mathcal{H}} から  {\mathcal{H}} への有界線形作用素全体  {\mathcal{B}(\mathcal{H})}
  • 有界作用素  {Q} の共役作用素  {Q^{\ast}}

 {\mathcal{B}(\mathcal{H})} の部分代数  {\mathcal{A}} {\ast} 代数であるとは、任意の  {Q  \in \mathcal{A}} に対して  {Q} の共役作用素  {Q}^{\ast} {\mathcal{A}} の元であることとする。

 {\mathcal{B}(\mathcal{H})} の部分代数  {\mathcal{A}} {C^{\ast}} 代数であるとは、 {\mathcal{A}} {\ast} 代数であり、作用素ノルムで定まる位相で完備であることとする。

 {\{\pi(\cdot),\mathcal{H}\}} {\ast} 代数  {\mathcal{A}} の表現であるとは、 {\mathcal{H}} はヒルベルト空間であり、 {\pi(\cdot)} {\mathcal{A}} から  {\mathcal{B}(\mathcal{H})} への準同型で、 {Q^{\ast}} は共役作用素  {\pi(Q)^{\ast}} に対応することと定める:

  •  {\pi(Q_1Q_2) = \pi(Q_1)\pi(Q_2)}
  •  {\pi(c_1Q_1 + c_2Q_2) = c_1\pi(Q_1) + c_2\pi(Q_2)}
  •  {\pi(Q^{\ast}) = \pi(Q)^{\ast}}

 {\mathcal{A}} の二つの表現  {\{\pi_1(\cdot),\mathcal{H}_1\}} {\{\pi_2(\cdot),\mathcal{H}_2\}} がユニタリー同値であるとは、 {\mathcal{H}_1} から  {\mathcal{H}_2} へのユニタリー作用素  {W} {W\pi_1(Q)W^{\ast} = \pi_2(Q)} をみたすものが存在することとする。

CAR 代数

フェルミ粒子の生成消滅作用素がフォック空間  {\mathcal{F}} 上に作用するとする。

正準反交換関係(Canonical Anti-Commutation Relations):

  • 生成作用素  {a_j^{\ast}}
  • 消滅作用素  {a_j}
  •  {\{a_i,a_j\} = 0}
  •  {\{a_i^{\ast},a_j^{\ast}\} = 0}
  •  {\{a_i,a_j^{\ast}\} = \delta_{ij}1}

全ての整数  {i} {j} を考え、 {a_i} {a_j^{\ast}} が生成するヒルベルト空間  {\mathcal{F}} 上の作用素の代数を CAR 代数と呼び  {\mathcal{A}_{\mathrm{CAR}}} で表す。

フォック空間  {\mathcal{F}} の真空ベクトル  {\Omega}

  • 全ての整数  {i} について  {a_i\Omega = 0} が成り立つ。
  •  {\mathcal{F}} {Q\Omega} {Q \in \mathcal{A}_{\mathrm{CAR}}})で生成される。

 {h} を複素ヒルベルト空間とする。

 {J} {h} の複素構造であるとは、次の条件をみたす反線形写像であることとする:

  •  {J^2 = 1}
  •  {(Jh_1,Jh_2)_h = (h_2,h_1)_h\quad (h_1,h_2 \in h)}

 {\mathcal{A}_{\mathrm{CAR}}(h,J)} を次の条件をみたす元  {B(h)} で生成される単位元を持つ  {C^{\ast}}-代数とする:

  •  {B(c_1h_1 + c_2h_2) = c_1B(h_1) + c_2B(h_2)}
  •  {B(h)^{\ast} = B(Jh)}
  •  {\{B(h_1),B(h_2)^{\ast}\} = (h_2,h_1)_h1}

 {h} の射影作用素  {E} が基本射影であるとは、 {JEJ = 1 - E} をみたすこととする。

 {h} のユニタリー作用素  {u} {JuJ = u} をみたすとき、 {\beta_u(B(h)) = B(uh)} により CAR 代数  {\mathcal{A}_{\mathrm{CAR}}(h,J)} の自己同型が定まる。(ボゴリューボフ変換)

基本射影  {E} で定まるフォック表現  {\{\pi_E(\cdot),\Omega_E,\mathcal{F}_E\}}

  • 全ての  {f \in h} について  {\pi_E(B(1 - E)f)\Omega_E = 0} が成立する。
  •  {\pi_E(\mathcal{A}_{\mathrm{CAR}}(h,J))\Omega_E} {\mathcal{F}_E} で稠密である。

Shale の定理

 {h} 上の基本射影  {E_1} {E_2} から定まるフォック表現  {\{\pi_{E_1}(\cdot),\Omega_{E_1},\mathcal{F}_{E_1}\}} {\{\pi_{E_2}(\cdot),\Omega_{E_2},\mathcal{F}_{E_2}\}} はユニタリー同値である。

作用素環入門

 {\mathcal{A}} を単位元を持つ  {C^{\ast}} 代数とする。

  •  {\varphi} {\mathcal{A}} の正の線形汎関数であるとは、 {\varphi} {\mathcal{A}} から複素数への線形汎関数であって、正値条件  {\varphi(Q^{\ast}Q) \ge 0} をみたすこととする。
  •  {\varphi} {\mathcal{A}} の状態であるとは、 {\varphi} の正の線形汎関数であって、規格化条件  {\varphi(1) = 1} をみたすこととする。
  •  {\mathcal{A}} の状態  {\varphi} が純粋状態であるとは、非自明な正の汎関数  {\psi} が以下の条件をみたすならば、 {\psi = \psi(1)\varphi} となることとする:
    •  {\psi(Q) \le \varphi(Q),\quad \forall Q \ge 0}

冨田–竹崎理論と統計力学

CAR と CCR 代数の準自由状態

無限自由度量子スピン系の時間発展と Lieb–Robinson の評価

格子上の量子スピン系の平衡状態と基底状態

スペクトルの統計的性質と KMS 状態の同値性