重点解説 スピンと磁性
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重点解説 スピンと磁性
現代物理学のエッセンス
川村光 著
2016年5月25日 初版発行
スピンの発見
スピン角運動量
スピン磁気モーメント
- ボーア磁子:
- 因子:
スピン軌道相互作用
電荷 の原子核から測った位置ベクトル の場所を速度 で運動している電子を考える。
電子の静止系におけるスピン軌道相互作用エネルギー
内部磁場:
パウリのスピン理論 非相対論的量子力学
シュレーディンガー方程式
複素2次元のスピン空間での2成分表示の波動関数
ハミルトニアン
- スピンによらない部分
- スピンに依存する部分
- :外部磁場
- :内部磁場
- :パウリ行列
$$ \sigma_x = \begin{pmatrix} 0 & 1 \\ 1 & 0 \end{pmatrix} ,\quad \sigma_y = \begin{pmatrix} 0 & -i \\ i & 0 \end{pmatrix} ,\quad \sigma_z = \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & -1 \end{pmatrix} $$
パウリ方程式
$$ i\hbar\frac{\partial}{\partial t}\phi = \begin{pmatrix} \mathcal{H}_0 + V_z & V_x - iV_y \\ V_x + iV_y & \mathcal{H}_0 - V_z \end{pmatrix} \phi $$
ディラックのスピン理論 相対論的量子力学
ディラック方程式
相対論的な電子の量子論
ディラック方程式は4次元時空内でのローレンツ変換に対して共変。
$$ x = \begin{pmatrix} x_1 = x \\ x_2 = y \\ x_3 = z \\ x_4 = ict \end{pmatrix} $$
4成分波動関数:ディラックスピノール
$$ \phi = \begin{pmatrix} \phi_1 \\ \phi_2 \\ \phi_3 \\ \phi_4 \end{pmatrix} $$
行列
$$ \gamma_1 = \begin{pmatrix} 0 & -i\sigma_x \\ i\sigma_x & 0 \end{pmatrix} ,\quad \gamma_2 = \begin{pmatrix} 0 & -i\sigma_y \\ i\sigma_y & 0 \end{pmatrix} ,\quad \gamma_3 = \begin{pmatrix} 0 & -i\sigma_z \\ i\sigma_z & 0 \end{pmatrix} ,\quad \gamma_4 = \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & -1 \end{pmatrix} $$
スピン磁気モーメント
量子力学的に静電磁場を扱う。
- ベクトルポテンシャル:
- スカラーポテンシャル:
ディラック方程式
$$ A = \begin{pmatrix} A_1 = A_x \\ A_2 = A_y \\ A_3 = A_z \\ A_4 = i\psi \end{pmatrix} $$
スピンと統計
- ボソン:粒子の入れ替えに対して波動関数が対称
- フェルミオン:粒子の入れ替えに対して波動関数が反対称
個の整数の組() の任意の置換を と表す。
ボース統計の 粒子波動関数
フェルミ統計の 粒子波動関数
フェルミオンは同一の1粒子状態を取ることはできない:パウリの排他律
理想フェルミ気体
フェルミ分布関数
- 粒子数
- 温度
- 化学ポテンシャル
- 1粒子状態 のエネルギー
- ボルツマン定数
での化学ポテンシャル のことをフェルミエネルギー 、それを温度に換算したものをフェルミ温度 という。
の3次元理想フェルミ気体のフェルミエネルギー
では、 以下の1粒子状態は全て占有され、 以上の1粒子状態は完全に空になっている。(フェルミ面)
理想ボース気体
ボース分布関数
- 粒子数
- 温度
- 化学ポテンシャル
- 1粒子状態 の1粒子エネルギー
- ボルツマン定数
3次元理想ボース気体は、有限温度でボース–アインシュタイン凝縮という相転移を示す。
転移温度 以下で、マクロな数 のボース粒子が最低1粒子状態 を占める。
磁性の起源 スピンと軌道
電子の磁気モーメント
ランジュバン常磁性
孤立磁気モーメント系が示す常磁性
ラーモア反磁性
外部磁場中の電子の軌道運動に伴う反磁性
パウリ常磁性
自由電子ガスが示す量子力学的な常磁性
ランダウ反磁性
外部磁場中の電子の軌道運動に伴う量子力学的な反磁性
自由イオンの磁性
多電子系のエネルギー準位は、電子の全軌道角運動量 と全スピン角運動量 の組 でラベルされる。
それぞれの準位は、 重に縮退している。
でラベルされる縮退した準位: 多重項
フントの規則
最低エネルギーの 多重項を与える規則
- 全スピン角運動量 の値を最大にする多重項
- その中で全軌道角運動量 を最大にする多重項
スピン軌道相互作用が存在するとき、ハミルトニアンと交換し良い量子数となるのは、全角運動量 である。
その場合のエネルギー準位は 多重項として記述される。
磁気モーメントの時間平均に寄与するのは との平行成分のみである。
ランデの 因子:
多重項は 重に縮退している。
固体内の磁性イオンと結晶場
結晶場
結晶個体中では、磁性陽イオンは、周囲の陰イオンから結晶の空間的対称性を反映したポテンシャルを受ける。
交換相互作用
2つの電子の全波動関数
- 3重項:
- 1重項:
2電子の軌道波動関数は、スピン3重厚の場合、電子の入れ替えに対して反対称、スピン1重項の場合、電子の入れ替えに対して対称になる。
- 3重項:
- 1重項: