物理ノート

サイエンス社「数理科学」SGCライブラリの読書メモ

演習形式で学ぶ相転移・臨界現象

SGCライブラリ - 84

演習形式で学ぶ相転移・臨界現象

宮下精二・轟木義一 共著

2011年9月25日 初版発行

熱力学における相転移

熱力学において系の状態は、熱平衡状態で一意的に与えられる物理量(状態量)によって記述される。

内部エネルギー  {U}

 {dU(S,V,N) = TdS - PdV + \mu dN}

  • 温度  {T}
  • 圧力  {P}
  • 化学ポテンシャル  {\mu}
  • エントロピー  {S}
  • 体積  {V}
  • 粒子数  {N}

状態方程式

 {\displaystyle T(S,V,N) = \left(\frac{\partial U(S,V,N)}{\partial S}\right)_{V,N}}

 {\displaystyle P(S,V,N) = -\left(\frac{\partial U(S,V,N)}{\partial V}\right)_{S,N}}

 {\displaystyle \mu(S,V,N) = \left(\frac{\partial U(S,V,N)}{\partial N}\right)_{S,V}}

Helmholtz の自由エネルギー  {\mathcal{F} \equiv U - TS}

 {d\mathcal{F}(T,V,N) = -SdT - PdV + \mu dN}

Gibbs の自由エネルギー  {\mathcal{G} \equiv U - TS + PV}

 {d\mathcal{G}(T,P,N) = -SdT + VdP + \mu dN}

van der Waals 方程式

 {\displaystyle \left(P - a\left(\frac{N}{V}\right)^2\right)(V - bN) = Nk_{\mathrm{B}}T}

  •  {a} は粒子間引力の大きさに関係した定数
  •  {b} は排除体積効果の大きさに関係した定数

 {P = P(V)} という形で書いたとき、 {P} {V} に関しての単調関数でなくなりはじめる温度  {T_C}、圧力  {P_C}、体積  {V_C}(臨界点)

 {\displaystyle P_C = \frac{a}{27b^2},\quad V_C = 3bN,\quad T_C = \frac{8a}{27Rb}}

 {T \lt T_C} において、圧力を変えたときに生じる気相–液相相転移では、体積  {V} が相転移点で不連続になる。

自由エネルギーの示強変数についての1次導関数で表される状態量が、相転移点において不連続になる相転移を1次相転移という。

自由エネルギーの示強変数についての2次導関数が転移点で発散する相転移を2次相転移といい、2次相転移の相転移点のことを臨界点という。

統計力学における相転移

分配関数

 {\mathcal{Z} = \mathrm{Tr}\,e^{-\beta\mathcal{H}}}

Helmholtz の自由エネルギー

 {\mathcal{F} = -k_{\mathrm{B}}T\ln\mathcal{Z}}

Ising 模型

各スピンには向きやすい方向、すなわち容易軸があり、その容易軸方向のスピンを表す変数として、格子点上に  {+1} {-1} の2値をとる変数  {\sigma_i} を考える。

 {\displaystyle \mathcal{H} = -\frac{J}{2}\sum_{\langle ij\rangle}\sigma_i\sigma_j - h\sum_{i=1}^N\sigma_i}

  • スピン間の交換積分  {J}
  • 外部磁場  {h}
  • 最近接格子対のみを考え、その和を記号  {\sum_{\langle ij\rangle}} を用いて表す。
  • 第1項を交換相互作用といい、第2項を Zeeman 項という。
  •  {J \gt 0} の場合(強磁性相互作用)、隣り合うスピンは、同じ向きに揃ったほうがエネルギー的に得。
  •  {J \lt 0} の場合(反強磁性相互作用)、隣り合うスピンは反対向きに揃ったほうがエネルギー的に得。

分配関数

 {\displaystyle \mathcal{Z} = \mathrm{Tr}\,e^{K\sum_{\langle ij\rangle}\sigma_i\sigma_j + L\sum_i\sigma_i}}

  • 状態和  {\mathrm{Tr}} は、すべてのスピンに関して  {\sigma_i = \pm 1} の和をとることを意味する。
  •  {K = \beta J}
  •  {L = \beta h}

分子場近似

 {i} 番目の格子点上のスピン  {\sigma_i} の熱平均を考える際にまわりのスピンを平均値  {m} で置き換える近似を行う。

 {i} 番目のスピンに関するハミルトニアン

 {\beta\mathcal{H}_i = (-Kz_0m + L)\sigma_i}

 {\displaystyle \langle\sigma_i\rangle = \frac{\sum_{\sigma_i = \pm 1}\sigma_ie^{(Kz_0m + L)\sum_i\sigma_i}}{\sum_{\sigma_i = \pm 1}e^{(Kz_0m + L)}\sum_i\sigma_i} = \tanh(Kz_0m + L)}

 {z_0} は最近接格子点の数。

この値が  {m} と等しいことを要請する。(セルフコンシステント方程式)

 {m = \tanh(Kz_0m + L)}

セルフコンシステント方程式は、 {Kz_0 \gt 1} で非自明な解  {m = m_S} を持つ。

系が無秩序相であるか秩序相であるかは、磁化  {m} によって特徴付けられる。(オーダーパラメータ)

臨界現象におけるスケーリングおよび繰り込み群の方法

物理量  {f} の臨界点近傍での冪的な振る舞いが、臨界点からのずれを指定している変数  {\varepsilon} に関して

 {f(\varepsilon) \simeq \varepsilon^{\lambda}(a_0 + a_1\varepsilon^{\lambda_1} + a_2\varepsilon^{\lambda_2} + \cdots) \sim a_0\varepsilon^{\lambda}}

の形に表されるとき、この  {\lambda} を関数  {f(\varepsilon)} に固有な臨界指数という。

  •  {0 \lt \lambda_1 \lt \lambda_2 \lt \cdots}
  • 振幅  {a_0} は臨界強度と呼ばれる模型に依存する定数である。
  • 特異性のうち一番強い項以外の項が無視できる領域を臨界領域という。

いろいろな模型

フラストレーションのある模型

Kosterlitz-Thouless 転移

量子臨界現象

ランダム効果

可解模型

共形場理論

相転移の動的側面と非平衡相転移