数物系のためのシンプレクティック幾何学入門
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数物系のためのシンプレクティック幾何学入門
植田一石 著
2015年7月25日 初版発行
解析力学
Lagrange 形式
経路の空間:
- 多様体
- 始時刻
- 終時刻
- 初期位置
- 終位置
作用汎関数:
- 配位空間 の接束
- Lagrange 関数
- の局所座標
汎関数の変分:
任意の変分 に対して が消えるためには、 が Euler–Lagrange 方程式を満たしていなければならない。
Hamilton 形式
Lagrange 関数 を の各ファイバーにおいて Legendre 変換することによって、新しい関数 を得ることができる。
- 配位空間
- 相空間
- Hamilton 関数
Hamilton の正準運動方程式:
Poisson の定理
Poisson 括弧:
相空間上の関数 の時間発展:
時間発展で不変に保たれるような相空間上の関数を系の保存量と呼ぶ。
Poisson の定理: と が系の保存量のとき、積 も系の保存量になる。
Poisson 多様体
Poisson 多様体とは、多様体 と写像 の組 で以下の条件を満たすものを指す:
- 反対称性:
- Leibniz 則:
- Jacobi 恒等式:
Hamilton ベクトル場:
上の Hamilton 流:
Noether の定理
相空間上の関数 を一つ選ぶごとに、それを Hamilton 関数とする Hamilton 流 が定まる。
Hamilton 関数 がこの流れに沿って一定であるとき、 の生成する Hamilton 流は を Hamiltonian 関数とする Hamilton 系の対称性であるという。
の生成する Hamilton 流が Hamilton 系の対称性であるための必要十分条件:
が Hamilton 系の保存量であるための必要十分条件:
Noether の定理:対称性と保存則は同じものである。
シンプレクティック多様体
多様体 とその上の非退化閉 次微分形式 の組 をシンプレクティック多様体と呼び、このときの をシンプレクティック形式と呼ぶ。
任意のシンプレクティック多様体は、以下で定まる自然な Poisson 構造を持つ:
構造の幾何学
実ベクトル空間 とその上の非退化な 次形式 の組 をシンプレクティックベクトル空間と呼ぶ。
- の次元は必ず偶数。
- は の基底 によって行列 で表される。
$$ J_{2n} = \begin{pmatrix}0 & I_n \\ -I_n & 0\end{pmatrix} $$
シンプレクティック基底:
シンプレクティック群:
Darboux の定理
任意の多様体 上の任意の非退化 次微分形式 に対し、 が定める 構造が積分可能であることと、 が閉形式であることは同値である。
シンプレクティック多様体 上の任意の点 に対し、 の近傍 と の開集合 との微分同相写像 が存在する:
複素多様体
次元多様体 に対し、 の構造群の への簡約を の概複素構造と呼ぶ。
概複素多様体 と に対して、 の への作用は を満たす:
シンプレクティック多様体 上の概複素構造 は、任意の と任意の零でない に対し であるとき、穏やかであるという。
が に関して穏やかならば、以下で定まる は の Riemann 計量を与える:
Kähler 多様体
構造を持つ多様体であって、それに付随する 構造と 構造がともに積分可能なものを Kähler 多様体と呼ぶ。
概複素多様体 とその上の Riemann 計量 の組で、 が 不変であるものを概 Hermite 多様体と呼ぶ:
概複素構造が積分可能な概 Hermite 多様体を Hermite 多様体と呼ぶ。
Hermite 多様体 が Kähler 多様体であるための必要十分条件は、 の基本 次微分形式 が閉形式(Kähler 形式)であることである。
いろいろなシンプレクティック多様体
シンプレクティック多様体 が完全であるとは、ある 次微分形式 が存在して となることを指す。
- Liouville 形式
- Liouville ベクトル場